地球上の動物の分布の要因
これは4月21日分の記事として掲載しておきます。地球上の動物の分布の要因に関する研究(Ficetola et al., 2017)が公表されました。近い種類の動物は世界の同一地域に共存する傾向があり、それは「生物地理区」として知られています。たとえば、ウォレス線はインドネシアを通る明確な境界を認めており、その両側の動物群は、それぞれオーストラリアとアジアにみられる動物群との近縁度が高くなっています。しかし、地球全体にこのような境界を形成する力は、これまで明らかにはされていませんでした。
この研究は、世界の陸地に基づく生物地理区の分布を、気候の変動・山地の形成・プレート構造の運動に関するモデルと照合することで、その3要因のそれぞれがどれだけ動物の移動に対する障壁を形成したのか、評価しました。その結果、進化的に最も深い分岐は、その3過程全てが複合した隣接地域の間に認められることが明らかになりました。たとえば、アフリカ・アジア・アラビア・ユーラシア大陸プレートが過去1億年の間に衝突したとき、ヒマラヤのような大山脈が形成され、地域の気候が変化し、旧世界の各地に明確な区分が形成されました。
対照的に、北アメリカ大陸に見られる動物分類の進化的近縁性は、東アジアに見られるものと同様に、プレート構造の活動とは何ら関係がなく、各大陸における異なった気候条件に対する選好性を反映している可能性が高いことも明らかになりました。これまで博物学において説明されてきた、さまざまな大陸や地域における動物相・植物相の相違の説明は、未検証の仮説に基づいているものが多かったのにたいして、この研究は、世界の陸上生物地理区の境界の背後にあると考えられる大きな要因の明確な検証結果を示している、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
地球の大変動が動物の分布を形成する
地球上の全動物の分布は、変化する気温、山地の隆起、および移動するプレート構造の組み合わせによって形成された、という論文が、今週のオンライン版に掲載される。その研究は、哺乳類、鳥類、および両生類の集団を世界の異なる地域に分離する明確な境界を発見しており、進化的に大きく異なる生物群は大きな地質学的事象によって分離された地域に認められ、近縁の生物群は年代の新しい気候変動によって隔てられていることが分かった。
近い種類の動物は、世界の同一地域に共存する傾向があり、それは「生物地理区」として知られている。たとえば、ウォレス線はインドネシアを通る明確な境界を認めており、その両側の動物群は、それぞれオーストラリア、アジアにみられる動物群との近縁度が高い。しかし、地球全体にこのような境界を形成する力は、これまで研究されてこなかった。
今回、Gentile Francesco Ficetolaたちは、世界の陸地に基づく生物地理区の分布を、気候の変動、山地の形成、およびプレート構造の運動に関するモデルと照らし合わせることにより、その3つの要因のそれぞれがどれだけ動物の移動に対する障壁を形成したのかを評価した。その結果、進化的に最も深い分岐は、その3つのプロセス全てが複合した隣接地域の間に認められることが分かった。例えば、アフリカ、アジア、アラビア、およびユーラシア大陸プレートが過去1億年の間に衝突したとき、ヒマラヤのような大山脈が形成され、地域の気候が変化して、旧世界の各地に明確な区分が形成された。対照的に、北米に見られる動物分類の進化的近縁性は、東アジアに見られるものと同様に、プレート構造の活動とは何ら関係がなく、各大陸における異なった気候条件に対する選好性を反映している可能性が高いことが分かった。
関連するNews & Views記事では、Alexandre Antonelliが次のように述べている。「博物学者たちは……さまざまな大陸や地域における動物相・植物相内の主要な相違を古くから記録してきた。しかし、そうした相違の説明は、未検証の仮説に基づいているものが多かった。……Ficetolaたちは、世界の陸上生物地理区の境界の背後にあると考えられる大きな要因の明確な検証結果を示している」。
参考文献:
Ficetola F, Mazel F, and Thuiller W.(2017): Global determinants of zoogeographical boundaries. Nature Ecology & Evolution, 1, 0089.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-017-0089
この研究は、世界の陸地に基づく生物地理区の分布を、気候の変動・山地の形成・プレート構造の運動に関するモデルと照合することで、その3要因のそれぞれがどれだけ動物の移動に対する障壁を形成したのか、評価しました。その結果、進化的に最も深い分岐は、その3過程全てが複合した隣接地域の間に認められることが明らかになりました。たとえば、アフリカ・アジア・アラビア・ユーラシア大陸プレートが過去1億年の間に衝突したとき、ヒマラヤのような大山脈が形成され、地域の気候が変化し、旧世界の各地に明確な区分が形成されました。
対照的に、北アメリカ大陸に見られる動物分類の進化的近縁性は、東アジアに見られるものと同様に、プレート構造の活動とは何ら関係がなく、各大陸における異なった気候条件に対する選好性を反映している可能性が高いことも明らかになりました。これまで博物学において説明されてきた、さまざまな大陸や地域における動物相・植物相の相違の説明は、未検証の仮説に基づいているものが多かったのにたいして、この研究は、世界の陸上生物地理区の境界の背後にあると考えられる大きな要因の明確な検証結果を示している、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
地球の大変動が動物の分布を形成する
地球上の全動物の分布は、変化する気温、山地の隆起、および移動するプレート構造の組み合わせによって形成された、という論文が、今週のオンライン版に掲載される。その研究は、哺乳類、鳥類、および両生類の集団を世界の異なる地域に分離する明確な境界を発見しており、進化的に大きく異なる生物群は大きな地質学的事象によって分離された地域に認められ、近縁の生物群は年代の新しい気候変動によって隔てられていることが分かった。
近い種類の動物は、世界の同一地域に共存する傾向があり、それは「生物地理区」として知られている。たとえば、ウォレス線はインドネシアを通る明確な境界を認めており、その両側の動物群は、それぞれオーストラリア、アジアにみられる動物群との近縁度が高い。しかし、地球全体にこのような境界を形成する力は、これまで研究されてこなかった。
今回、Gentile Francesco Ficetolaたちは、世界の陸地に基づく生物地理区の分布を、気候の変動、山地の形成、およびプレート構造の運動に関するモデルと照らし合わせることにより、その3つの要因のそれぞれがどれだけ動物の移動に対する障壁を形成したのかを評価した。その結果、進化的に最も深い分岐は、その3つのプロセス全てが複合した隣接地域の間に認められることが分かった。例えば、アフリカ、アジア、アラビア、およびユーラシア大陸プレートが過去1億年の間に衝突したとき、ヒマラヤのような大山脈が形成され、地域の気候が変化して、旧世界の各地に明確な区分が形成された。対照的に、北米に見られる動物分類の進化的近縁性は、東アジアに見られるものと同様に、プレート構造の活動とは何ら関係がなく、各大陸における異なった気候条件に対する選好性を反映している可能性が高いことが分かった。
関連するNews & Views記事では、Alexandre Antonelliが次のように述べている。「博物学者たちは……さまざまな大陸や地域における動物相・植物相内の主要な相違を古くから記録してきた。しかし、そうした相違の説明は、未検証の仮説に基づいているものが多かった。……Ficetolaたちは、世界の陸上生物地理区の境界の背後にあると考えられる大きな要因の明確な検証結果を示している」。
参考文献:
Ficetola F, Mazel F, and Thuiller W.(2017): Global determinants of zoogeographical boundaries. Nature Ecology & Evolution, 1, 0089.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-017-0089
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