負担になりかねない絶滅種の復活

 絶滅種の復活が地域に及ぼす影響に関する研究(Bennett et al., 2017)が公表されました。この研究は、費用便益分析を行ない、ニュージーランドおよびオーストラリアのニューサウスウェールズ州の政府にとって、保護する余裕を持てる生物種の数を算出しました。費用の推定は、最近の絶滅種および類似の現生種に基づいています。分析の結果、最近の絶滅種の一部を元の生息地に再導入すると、局地的には現存の生物多様性が向上する可能性があるものの、ニュージーランドでは、全11種の絶滅焦点生物種を政府資金で保全した場合、ほぼ3倍となる31種もの現生種の保護が犠牲になることが明らかになりました。すでに絶滅したニューサウスウェールズ州の焦点生物種5種の保全に対する外部資金は、現生種に使えば8倍を超える42種を保護することができます。絶滅種復活技術は未完成ですが、この研究は、絶滅生物の再生ではどの種をどこに再導入すべきかについて熟慮する必要があるだろう、との結論を提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


絶滅種の復活は地球への負担になりかねない

 絶滅種の再生は、生物多様性を増すどころか減じる可能性がある、という論文が、今週のオンライン版に掲載される。この研究は、すでに逼迫している保護予算の対象をさらに広げて絶滅種復活のコストをまかなうことになれば、現生種(今でも存在している種)を絶滅の危機にさらしかねないことを示唆している。

 Joseph Bennettたちは、費用便益分析を行い、ニュージーランド(NZ)およびオーストラリア・ニューサウスウェールズ州(NSW)の政府にとって保護する余裕を持てる生物種の数を算出した。費用の推定は、最近の絶滅種および類似の現生種に基づいている。研究の結果、最近の絶滅種の一部をもとの生息地に再導入すると、局地的には現存の生物多様性が向上する可能性があるものの、NZでは、全11種の絶滅焦点生物種を政府資金で保全すれば、ほぼ3倍もの現生種(31種)の保護が犠牲になることが分かった。すでに絶滅したNSWの焦点生物種5種の保全に対する外部資金は、現生種に使えば8倍を超える数(42種)を保護することができる。

 絶滅種復活技術は未完成であるが、研究チームは、絶滅生物の再生ではどの種をどこに再導入すべきかについて熟慮する必要があろう、という結論に達している。



参考文献:
Bennett JR. et al.(2017): Spending limited resources on de-extinction could lead to net biodiversity loss. Nature Ecology & Evolution, 1, 0053.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-016-0053

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