アフリカヌスの踵骨の分析

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、アウストラロピテクス属化石の踵骨に関する研究(Zeininger et al., 2017)が報道されました。この研究が分析対象としたのは、南アフリカ共和国のスタークフォンテン(Sterkfontein)洞窟で発見されたアウストラロピテクス属化石である踵骨「StW 352」です。StW 352はアフリカヌス(Australopithecus africanus)に分類されています。StW 352は、現代人・チンパンジー・ゴリラ・ヒヒと比較されました。

 分析・比較の結果、StW 352の踵骨は、これら現生種のどれかと全てにおいて最も類似しているというわけではなく、モザイク状の特徴を示していることが分かりました。たとえば、StW 352は、多変量解析ではチャクマヒヒ(Papio ursinus)と、踵立方関節ではヒガシゴリラ(Gorilla beringe)と、距踵関節ではニシゴリラ(Gorilla gorilla)と最も類似しており、ホモ属的な特徴も見られます。

 また、踵骨の形態学的分析からは、踵骨と環境との相互作用を推測することができます。この分析から、StW 352は移動に伴う踵骨への負荷を現代人よりも多く経験したものの、チンパンジー(Pan troglodytes)やニシゴリラやヒガシゴリラやチャクマヒヒよりも少ないので、アフリカヌスは樹木環境も含めて広範囲を移動しており、その行動パターンは現代人やアフリカの現生類人猿とも異なっていたのではないか、と推測されています。おそらく現代人の直系祖先ではないだろうアフリカヌスは、ホモ属とアウストラロピテクス以前の現代人の祖先系統との中間的な特徴を単純に有しているのではなく、独自の形態・行動も少なからず見られるのではないか、と思います。


参考文献:
Zeininger A. et al.(2016): Trabecular architecture in the StW 352 fossil hominin calcaneus. Journal of Human Evolution, 97, 145–158.
http://doi.org/10.1016/j.jhevol.2016.05.009

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