食虫植物の進化(追記有)
食虫植物の進化に関する研究(Fukushima et al., 2017)が公表されました。オーストラリアの嚢状葉植物であるフクロユキノシタ(Cephalotus follicularis)は、獲物の動物を消化することができる液体で満たされた捕虫葉と非捕虫葉(普通葉)の両方を作ります。これは、両者の比較により食虫性がどのように発達したのか分かることを意味しています。この研究は、フクロユキノシタのゲノム塩基配列を解読し、両タイプの葉の全ゲノム的な発現パターンを比較することにより、獲物の誘引・捕獲・消化など、食虫植物の独特の適応の一部を明らかにしました。
次にこの研究は、フクロユキノシタの捕虫葉の消化液を、他の近縁でない食虫植物3種(アデレーモウセンゴケ・フィリピンのウツボカズラ・ムラサキヘイシソウ)の消化液と比較しました。その結果、他の植物ではストレス応答に関係している遺伝子が、調べた4種の食虫植物すべてにおいて消化液のタンパク質として働くように転用されていることが明らかになりました。4種の植物すべてでタンパク質およびアミノ酸の同じ組み合わせが消化能力につながっており、食虫性がそれぞれの種で独立して複数回にわたって進化したのではないか、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
食虫植物の進化の謎が明らかにされた
オーストラリアの嚢状葉植物の全ゲノム塩基配列が今週のオンライン版で発表される。これは、食虫植物が獲物を消化する能力をどのように進化させたのかを明らかにするものである。
オーストラリアの嚢状葉植物フクロユキノシタ(Cephalotus follicularis)は、獲物の動物を消化することができる液体で満たされた捕虫葉と非捕虫葉(普通葉)の両方を作る。このことは、その両者を比較することによって食虫性がどのように発達したのかが分かることを意味している。福島 健児(ふくしま けんじ)、Victor Albert、李 帥成(Shuaicheng Li)、長谷部 光泰(はせべ みつやす)たちは、C. follicularisのゲノム塩基配列を解読し、両タイプの葉の全ゲノム的な発現パターンを比較することにより、獲物の誘引や捕獲、消化など、食虫植物の独特の適応の一部を明らかにした。
次に研究チームは、C. follicularisの捕虫葉の消化液を、他の近縁でない食虫植物3種(アデレーモウセンゴケ、フィリピンのウツボカズラNepenthes alata、およびムラサキヘイシソウ)の消化液と比較した。その結果、他の植物ではストレス応答に関係している遺伝子が、調べた4種の食虫植物全てにおいて消化液のタンパク質として働くように転用されていることが分かった。4種の植物全てでタンパク質およびアミノ酸の同じ組み合わせが消化能力につながっており、食虫性がそれぞれの種で独立して複数回にわたって進化したことが指摘された。
参考文献:
Fukushima K. et al.(2017): Genome of the pitcher plant Cephalotus reveals genetic changes associated with carnivory. Nature Ecology & Evolution, 1, 0059.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-016-0059
追記(2017年3月14日)
以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。
食虫植物フクロユキノシタのゲノムから明らかになった、食虫性に関連する遺伝的変化
食虫植物は動物を栄養源として利用しており、その食虫性に関連する形質の起源や進化については長年の疑問となっている。今回我々は、食虫性の分子基盤を調べるため、異形葉性の食虫植物フクロユキノシタ(Cephalotus follicularis)のゲノム塩基配列を解読し、さらに、捕虫葉と非捕虫葉(平面葉)の発生の切り替えを制御することに成功した。この2種類の葉のトランスクリプトームを比較し、遺伝子レパートリーを解析することにより、被食者の誘引、捕獲、消化および栄養素吸収に関連する遺伝的変化が明らかになった。フクロユキノシタが分泌する消化液タンパク質と、それ以外の系統で独立に食虫性が生じた3種の食虫植物の消化液タンパク質を分析した結果、ストレス応答性のタンパク質群が繰り返し転用され、収斂的なアミノ酸置換と相まって、消化生理機能が獲得されたことが分かった。これらの結果は、植物の食虫性進化のために取り得る道筋が限られていたことを意味している。
次にこの研究は、フクロユキノシタの捕虫葉の消化液を、他の近縁でない食虫植物3種(アデレーモウセンゴケ・フィリピンのウツボカズラ・ムラサキヘイシソウ)の消化液と比較しました。その結果、他の植物ではストレス応答に関係している遺伝子が、調べた4種の食虫植物すべてにおいて消化液のタンパク質として働くように転用されていることが明らかになりました。4種の植物すべてでタンパク質およびアミノ酸の同じ組み合わせが消化能力につながっており、食虫性がそれぞれの種で独立して複数回にわたって進化したのではないか、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
食虫植物の進化の謎が明らかにされた
オーストラリアの嚢状葉植物の全ゲノム塩基配列が今週のオンライン版で発表される。これは、食虫植物が獲物を消化する能力をどのように進化させたのかを明らかにするものである。
オーストラリアの嚢状葉植物フクロユキノシタ(Cephalotus follicularis)は、獲物の動物を消化することができる液体で満たされた捕虫葉と非捕虫葉(普通葉)の両方を作る。このことは、その両者を比較することによって食虫性がどのように発達したのかが分かることを意味している。福島 健児(ふくしま けんじ)、Victor Albert、李 帥成(Shuaicheng Li)、長谷部 光泰(はせべ みつやす)たちは、C. follicularisのゲノム塩基配列を解読し、両タイプの葉の全ゲノム的な発現パターンを比較することにより、獲物の誘引や捕獲、消化など、食虫植物の独特の適応の一部を明らかにした。
次に研究チームは、C. follicularisの捕虫葉の消化液を、他の近縁でない食虫植物3種(アデレーモウセンゴケ、フィリピンのウツボカズラNepenthes alata、およびムラサキヘイシソウ)の消化液と比較した。その結果、他の植物ではストレス応答に関係している遺伝子が、調べた4種の食虫植物全てにおいて消化液のタンパク質として働くように転用されていることが分かった。4種の植物全てでタンパク質およびアミノ酸の同じ組み合わせが消化能力につながっており、食虫性がそれぞれの種で独立して複数回にわたって進化したことが指摘された。
参考文献:
Fukushima K. et al.(2017): Genome of the pitcher plant Cephalotus reveals genetic changes associated with carnivory. Nature Ecology & Evolution, 1, 0059.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-016-0059
追記(2017年3月14日)
以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。
食虫植物フクロユキノシタのゲノムから明らかになった、食虫性に関連する遺伝的変化
食虫植物は動物を栄養源として利用しており、その食虫性に関連する形質の起源や進化については長年の疑問となっている。今回我々は、食虫性の分子基盤を調べるため、異形葉性の食虫植物フクロユキノシタ(Cephalotus follicularis)のゲノム塩基配列を解読し、さらに、捕虫葉と非捕虫葉(平面葉)の発生の切り替えを制御することに成功した。この2種類の葉のトランスクリプトームを比較し、遺伝子レパートリーを解析することにより、被食者の誘引、捕獲、消化および栄養素吸収に関連する遺伝的変化が明らかになった。フクロユキノシタが分泌する消化液タンパク質と、それ以外の系統で独立に食虫性が生じた3種の食虫植物の消化液タンパク質を分析した結果、ストレス応答性のタンパク質群が繰り返し転用され、収斂的なアミノ酸置換と相まって、消化生理機能が獲得されたことが分かった。これらの結果は、植物の食虫性進化のために取り得る道筋が限られていたことを意味している。
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