大相撲春場所千秋楽

 これは3月27日分の記事として掲載しておきます。稀勢の里関が「日本出身」力士として久々に横綱に昇進して初めての場所を迎えたことで、今場所は大いに盛り上がったように思います。稀勢の里関は12日目まで無敗を守り、単独首位に立ちました。ただ、相撲内容自体は、攻め込まれることも多く、あまり褒められたものではないと思っていたので、13日目に日馬富士関に敗れたことは意外ではありませんでした。まあ、攻め込まれることが多かったとはいっても、余裕のある残し方が多かったので、好意的に解釈すれば、横綱相撲と言えるかもしれませんが。稀勢の里関は13日目に日馬富士関に敗れて負傷し、強行出場したものの、やはり力を出せる状態ではなく、14日目に鶴竜関に敗れ、14日目が終わった時点で、優勝争いは1敗の照ノ富士関と2敗の稀勢の里関に絞られました。

 正直なところ、私は照ノ富士関があっさり2回目の優勝を決めると確信しており、14日目が終了した時点でほぼ記事を執筆し終えていたのですが、稀勢の里関が本割と決定戦で連勝して2場所連続2回目の優勝を果たし、かなり書き直さざるを得ませんでした。千秋楽の稀勢の里関に関しては、本割で変化したことも含めて、本割・決定戦ともに相撲内容はよくなったのですが、勝因は、照ノ富士関が稀勢の里関の怪我を悪化させまいとして気を遣い過ぎたことにあるのではないか、と思います。確かに、稀勢の里関の怪我は深刻なものであり、本割での変化は、何とか勝とうとしての苦肉の策なのでしょうが、14日目の対戦相手の鶴竜関もそうだったであろうように、対戦相手に状態を気遣わせることはあってはならず、ましてや横綱なのですから、14日目と千秋楽は休場すべきだったと思います。これで怪我が悪化し、稀勢の里関の現役生活を縮めるようなことがなければよいのですが。

 照ノ富士関に関しては、もう以前の力を取り戻せないのではないか、と心配していただけに、今場所の復活には喜んでいます。鶴竜関とは異なり、相手の状態を気遣いつつ勝つような器用さがなかったのが、優勝を逃した要因でしょうか。照ノ富士関は、大怪我の前に一度は実力で稀勢の里関を完全に上回り、稀勢の里関よりも横綱にずっと相応しい、と私は考えていましたし、今の横綱・大関陣は照ノ富士関を除いて全員30代であり、20代半ばの照ノ富士関がこのまま復活できなければ、数年後たいへん厳しい状況になるのではないか、と懸念していたので、照ノ富士関に横綱昇進への道が再び開かれ、安心しました。もっとも、照ノ富士関は先場所が4勝11敗、昨年は大関として33勝48敗9休という成績だっただけに、来場所全勝優勝を果たしたとしても、もう1場所様子を見て横綱に昇進させるか否か、決めるほうがよいと思います。

 ただ、照ノ富士関は復活したとはいえ、力任せの雑な相撲は以前と変わらないので、また負傷するのではないか、との懸念は払拭できません。また、琴奨菊関との取り組みでの変化とその後の表情などもあり、横綱に昇進したとしても、悪役として人気が低迷しそうなのも、懸念されます。稀勢の里関に逆転で優勝を許した一因として、琴奨菊関との一番で観客を敵に回してしまい、それが重圧になったこともあるのではないか、と思います。まあ、照ノ富士関に色々と問題もあるとはいえ、以前の力を取り戻せたとしたら、照ノ富士関が次の横綱にもっとも相応しいことは確かであり、安易に変化することなく、豪快な相撲で人気を得ていってもらいたいものです。

 鶴竜関と日馬富士関はともに10勝5敗で、まあこんなものだろう、と思います。日馬富士関の方は、やはり状態が悪いようなので、後1回優勝できるかどうか、といったところでしょうか。鶴竜関の方は、白鵬関が復活できず、稀勢の里関が今場所の強行出場により実力を大きく落とすとしたら、今後数回優勝できるかもしれません。ただ、白鵬関が復活し、稀勢の里関の怪我が深刻なものではないとしたら、もう優勝できないかもしれません。高安関は12勝3敗で、来場所再度大関昇進に挑戦することになります。現時点で、高安関がもっとも大関に近い力士であることは間違いないでしょうが、今場所もそうだったように、集中力が途切れるのか、終盤に失速することがあり、この点が懸念されます。

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