大相撲初場所千秋楽

 これは1月23日分の記事として掲載しておきます。今場所は、横綱の日馬富士関・鶴竜関と大関の豪栄道関が途中休場し、大関の照ノ富士関と琴奨菊関は体調が万全ではなくて全盛期の力には程遠く、白鵬関は全盛期を過ぎているのみならず、調子がさほど良くなさそうだということで、全盛期を過ぎたであろう稀勢の里関にとって初優勝の絶好の機会となったのですが、それでも、14日目で稀勢の里関が初優勝を決めるとは意外でした。今場所の稀勢の里関は、全盛期を過ぎたであろうということを考慮に入れたとしても、調子はさほど良くなさそうであり、おそらくは例によって重圧に負けて琴奨菊関に敗れた一番をさておくとしても、千秋楽結びの一番も含めて相撲内容自体は全体的に悪いように思われました。それでも優勝できたのは、他の上位陣があまりにも不振だったからで、今場所で優勝できなければ、おそらく引退まで優勝できなかったのではないか、とも思います。

 稀勢の里関は千秋楽結びの一番で、押し込まれながらも土俵際の逆転で白鵬関に勝って14勝1敗とし、どうやら今場所後に横綱に昇進するようです。双羽黒(北尾)関の廃業以降の横綱昇進の基準を考えると、先場所まで幕内で、優勝経験どころか優勝決定戦への進出も14勝以上の経験もなく、大関としては水準よりなかなか上の成績という程度の稀勢の里関が横綱に相応しいとはまったく思いませんが、それ以上に、先場所は「準優勝」とはいっても優勝した鶴竜関とは星二つの差があり、先々場所は10勝だったわけですから、今場所は横綱昇進を見送るべきだと思います。稀勢の里関は、来場所12勝以上の優勝ならば文句なしに横綱昇進でよいでしょうし、優勝できなくても14勝ならば、横綱昇進で問題ないと思います。

 経営者側としての視点からは、相撲協会が「日本人」横綱を誕生させたいと切望するのは分かるものの、相撲協会は本当に稀勢の里関に甘いのだなあ、とうんざりします。まあ、稀勢の里関への相撲関係者・愛好者の「期待」は大きいとはいえ、腰高で相撲が上手いわけでも速いわけでもなく、力があるとはいっても曙関や武蔵丸関や把瑠都関ほどではなくて、重圧にたいへん弱く、不愛想で、千代の富士関や霧島関のように二枚目でもない稀勢の里関の人気は、ほとんど「日本人」力士として最強ということに起因するものだと思われますので、その点でも、納得がいかないというか、個人的には面白くありません。もっとも、稀勢の里関は珍しいガチンコ力士だと言われており、それが事実だとすると立派ですが、多くの相撲愛好者はそんなことを知らないか、知っていてもさほど気にしていないでしょうから、やはり稀勢の里関の人気は「日本人」力士として最強という評価にほぼ依存しているのでしょう。

 白鵬関は、調子が悪いとはいえ、さすがに今でも第一人者なだけに、14日目まで優勝争いに加わりましたが、14日目の貴ノ岩関との一番は、あたかも日本の相撲関係者・愛好者の同調圧力に屈したという感じの負け方で、大きな危機のなかの大相撲を支えてくれた歴史的な大横綱にたいする日本の相撲関係者・愛好者の近年の対応には、大いに疑問の残るところです。白鵬関はこれで4場所優勝から遠ざかったことになりますが、まだ優勝できるだけの力はじゅうぶん残っており、今後しばらくは優勝争いの中心となるでしょう。

 琴奨菊関は大関陥落となりましたが、今場所の状態から考えて、大関復帰はないでしょう。照ノ富士関も心配で、来場所で大関を陥落したとしても不思議ではありません。途中休場となった鶴竜関と日馬富士関は、まだ優勝できるだけの力はありそうです。今後しばらくは白鵬関・日馬富士関・鶴竜関が優勝争いの中心となるでしょうが、ともに31歳以上であり、稀勢の里関も豪栄道関も30代なのですから、数年後がたいへん不安ではあります。照ノ富士関はもう以前の力を取り戻せないでしょうから、他の若手力士に期待するしかありません。

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