玉木俊明『先生も知らない世界史』
これは1月17日分の記事として掲載しておきます。日経プレミアムシリーズの一冊として、日本経済新聞出版社から2016年10月に刊行されました。定住生活と農耕の始まりから現代までを対象としていますが、冒頭で述べられているように、西洋中心の解説となっています。アジアやアメリカ大陸についてもそれなりに言及されていますが、本書の主題はあくまでも、ヨーロッパが他地域にたいして優位に立った理由の解明なので、そうした観点からのヨーロッパとの比較が多くなっています。
本書は、前近代においてヨーロッパはアジアと比較して貧しかった、と強調しています。欧米の研究では、近世前期の時点で豊かさという点でヨーロッパはアジアとほぼ同等であり、その後に大きな差がついた、との見解も盛んとのことですが、本書は、そうした見解の多くは単一の指標に基づいたものであり、妥当ではない、と指摘しています。本書は、欧米の経済史では単一の指標に基づいた根拠の曖昧な見解が受容される傾向にあるとして、欧米の経済史学界にたいしてかなり批判的です。門外漢の私には、本書の見解がどこまで妥当なのか、判断の難しいところです。
本書は、ヨーロッパの他地域にたいする優位の確立には二段階ある、との見解を提示しています。まず、ヨーロッパにおいて市場の情報が多く出回るようになり、取引のリスクが低下するという経済制度面での優位が確立します。次に、イギリスで産業革命が起きたことで、本書は綿の貿易・綿織物の生産を重視しています。本書は、イギリスこそ世界規模での初のヘゲモニー国家だとして、イギリスの覇権確立過程とその理由にかなりの分量を割いています。
イギリスの覇権確立とも関連しますが、本書は流通・輸送を重視しています。じゅうらいの経済史ではこれが軽視されていたので、地域あるいは国家間の勢力について妥当な評価がなされていない、というわけです。また、情報を重視するのも本書の特徴で、交通手段の発達(帆船から蒸気船への移行)や電信技術の確立が特筆されています。本書は全体的に読みやすいものの、著者の以前の新書『ヨーロッパ覇権史』(関連記事)の焼き直しといった感は否めず、ヨーロッパ中心の解説だったことも含めて、やや期待外れでした。
本書は、前近代においてヨーロッパはアジアと比較して貧しかった、と強調しています。欧米の研究では、近世前期の時点で豊かさという点でヨーロッパはアジアとほぼ同等であり、その後に大きな差がついた、との見解も盛んとのことですが、本書は、そうした見解の多くは単一の指標に基づいたものであり、妥当ではない、と指摘しています。本書は、欧米の経済史では単一の指標に基づいた根拠の曖昧な見解が受容される傾向にあるとして、欧米の経済史学界にたいしてかなり批判的です。門外漢の私には、本書の見解がどこまで妥当なのか、判断の難しいところです。
本書は、ヨーロッパの他地域にたいする優位の確立には二段階ある、との見解を提示しています。まず、ヨーロッパにおいて市場の情報が多く出回るようになり、取引のリスクが低下するという経済制度面での優位が確立します。次に、イギリスで産業革命が起きたことで、本書は綿の貿易・綿織物の生産を重視しています。本書は、イギリスこそ世界規模での初のヘゲモニー国家だとして、イギリスの覇権確立過程とその理由にかなりの分量を割いています。
イギリスの覇権確立とも関連しますが、本書は流通・輸送を重視しています。じゅうらいの経済史ではこれが軽視されていたので、地域あるいは国家間の勢力について妥当な評価がなされていない、というわけです。また、情報を重視するのも本書の特徴で、交通手段の発達(帆船から蒸気船への移行)や電信技術の確立が特筆されています。本書は全体的に読みやすいものの、著者の以前の新書『ヨーロッパ覇権史』(関連記事)の焼き直しといった感は否めず、ヨーロッパ中心の解説だったことも含めて、やや期待外れでした。
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