アマゾン低地における過去45000年間の水文気候の変化

 アマゾン低地における過去45000年間の水文気候の変化に関する研究(Wang et al., 2017)が公表されました。アマゾンの森林は、気候変動と生物化学的変動の大部分にたいして、年々から1000年の時間スケールで応答するとともに、影響も及ぼしています。しかし、この地域における過去の気候変動の分解能の高い記録を手に入れるのは難しく、最終氷期極大期(LGM)において、アマゾンの森林が湿潤だったのか、それとも乾燥していたのかについてすら、これまでよく分かっていませんでした。

 この研究は、アマゾン川流域東部のパライソ洞窟にある方解石堆積物の石筍から、過去45000年にわたる酸素同位体データを集めました。このデータから、降水量は21000年前頃のLGMでは現在の約半分だったのにたいして、6000年前の中期完新世では約50%多く、気温および二酸化炭素の全球的変化と時期的におおむね一致していることが示されました。アマゾン川流域は、氷期には今より乾燥していたものの、熱帯雨林は存続していました。しかし、将来も存続し得るかどうかについては、まだ結論が出ていない、と指摘されています。人類のアマゾン流域への拡散とも関連してくる研究なので、今後の進展が注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


気候科学:アマゾン低地における過去4万5000年にわたる水文気候の変化

Cover Story:潤いを保ち続けるアマゾンの熱帯雨林:アマゾン盆地の水文気候の変化に対する森林の復元力を示す4万5000年間の記録

 表紙は、2016年4月6日に国際宇宙ステーションから撮影されたアマゾン川。アマゾンの森林は、気候変動と生物化学的変動の大部分に対して、年々から1000年の時間スケールで応答するとともに影響も及ぼしている。しかし、この地域における過去の気候変動の分解能の高い記録を手に入れるのは難しく、最終氷期極大期(LGM)においてアマゾンの森林が湿潤だったのか、乾燥していたのかについてすら、これまでよく分かっていなかった。X Wangたちは今回、アマゾン川流域東部のパライソ洞窟にある方解石堆積物の石筍から、過去4万5000年にわたる酸素同位体データを集めている。このデータは、降水量は、約2万1000年前のLGMでは現在の約半分であったが、6000年前の中期完新世では約50%多く、気温と二酸化炭素の全球的変化と時期的におおむね一致していることを示している。アマゾン川流域は、氷期には今より乾燥していたが、熱帯雨林は存続していた。しかし、将来も存続し得るかどうかについては、結論がまだ出ていない。



参考文献:
Wang X. et al.(2017): Hydroclimate changes across the Amazon lowlands over the past 45,000 years. Nature, 541, 7636, 204–208.
http://dx.doi.org/10.1038/nature20787

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