1万年前頃の植物の加熱調理

 これは1月11日分の記事として掲載しておきます。1万年前頃の植物の加熱調理関する研究(Dunne et al., 2016)が公表されました。土器は東アジアと北アフリカにおいて、1万年以上前に互いに無関係に発明されたと考えられています。その土器について、牛乳などの動物産品の加工に利用されたことを示す証拠は存在しますが関連記事、植物の調理で果たした役割は明らかになっていませんでした。この研究は、リビアのサハラ砂漠のタカルコリ(Takarkori)・ウアンアフダ(Uan Afuda)遺跡から出土した10200年前頃の合計110個の土器片を調べました。

 土器に残されている脂質付着物の炭素同位体比の分析の結果、土器は多葉植物・種子・穀物・水生植物など、周辺の湖沼およびサバンナで採集された多様な植物の加工に利用されていたことが示されました。これらの土器は、この地域における植物の栽培化・農業に4000年以上先行することになります。この研究は、前期完新世の狩猟採集民が、当時の緑のサハラに存在した穀物などの野生植物により食事の必要を充足させる上で、新たな発見から想定される植物加工技術がきわめて重要だった可能性がある、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


植物の加熱調理には1万年の歴史がある

 今週のオンライン版に掲載される論文によれば、かつて緑のサバンナであったサハラでは、1万200年も昔の新石器時代人が野生の穀物や多葉植物、水生植物を土器で調理していたという。

 人類史の中で、土器は約1万6,000年前の東アジアと、約1万2,000年前の北アフリカの2回にわたって互いに無関係に発明されたと考えられている。その土器について、牛乳などの動物産品の加工に利用されたことを示す証拠は存在するが、植物の料理で果たした役割は知られていなかった。

 Richard Evershedたちは、リビアサハラのTakarkoriおよびUan Afuda遺跡から出土した合計110個の土器片を調べた。土器に残されている脂質付着物の炭素同位体比を分析した結果、その土器は、多葉植物、種子、穀物、および水生植物など、周辺の湖沼およびサバンナで採集された多様な植物の加工に利用されていたことが示された。

 その土器は、この地域での植物の栽培化および農業に4000年以上先行することが分かった。研究チームは、前期完新世の狩猟採集民が当時の緑のサハラに存在した穀物などの野生植物によって食事の必要を充足させる上で、今回の知見によって想定された植物加工技術が極めて重要であった可能性があると結論付けている。



参考文献:
Dunne J. et al.(2016): Earliest direct evidence of plant processing in prehistoric Saharan pottery. Nature Plants, 3, 16194.
http://dx.doi.org/10.1038/nplants.2016.194

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