植物を食べていた中期更新世の人類
これは12月8日分の記事として掲載しておきます。中期更新世初期の人類の食性に関する研究(Melamed et al., 2016)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。初期人類の食性に関する研究は、おもに動物の遺骸に依拠しているので、植物性の食資源については、まだよく明らかになっていないところがりあます。この研究は、イスラエル北部のフラ(Hula)湖畔にある、下部旧石器時代のアシューリアン(Acheulian)遺跡として有名なジスルバノトヤコブ(Gesher Benot Ya‘aqov)における植物の残存を報告しています。
ジスルバノトヤコブ遺跡では多くの考古学的成果が得られており、このブログでも何度か取り上げました。効率的・組織的方法によるダマジカの定期的な狩猟・解体(関連記事)や、ユーラシアでは最初期となりそうな管理された火の使用(関連記事)や、アシューリアン石器製作における計画性・先見性(関連記事)や、一定水準以上の空間認識能力(関連記事)です。後のホモ属であるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や現代人と比較してどうなのか、また後のホモ属との系統関係についてはっきりとは分かりませんが、ジスルバノトヤコブ遺跡の中期更新世の人類(ほぼ間違いなくホモ属でしょう)が、現代人とも通ずる一定水準以上の認知能力を有していたことは間違いないようです。
この研究は、ジスルバノトヤコブ遺跡で発見された78万年前頃の植物群について報告しています。この植物群は55の分類群から構成され、堅果・果物・種子・葉・根茎などを含んでいます。これらのなかには、そのままでは人間が食べられない(きわめて食べづらい)ものや有毒なものも含まれていますが、上述したように、ジスルバノトヤコブ遺跡ではすでに火が人間の管理下で使用されていました。そのため、火の使用により植物を無毒化・食べやすくすることで、植物は人間の食資源としてさらに利用価値が高まったのではないか、と指摘されています。もちろん、ジスルバノトヤコブ遺跡では、植物だけではなく水生および陸生の動物も食べられており、多様な食性から季節性も指摘されています。
また、ジスルバノトヤコブ遺跡に関しては、中期更新世初期の時点で、人類がアフリカとは異なる環境によく適応する能力を有していたことが指摘されており、その観点から人類の拡散と出アフリカも把握されています。中期更新世初期には、すでに人類はアフリカだけではなく広くユーラシアに拡散していました。人類の確実な出アフリカは、現時点では185万年前頃までさかのぼり(関連記事)、今後さらにさかのぼる可能性は高いでしょう。185万年前頃と78万年前頃とでは、人類の認知能力にかなりの違いがあったのかもしれませんが、すでに200万年前頃の時点で、現代人につながる系統の人類には、ある程度以上の認知能力が存在したのでしょう。
参考文献:
Melamed Y. et al.(2016): The plant component of an Acheulian diet at Gesher Benot Ya‘aqov, Israel. PNAS, 113, 51, 14674–14679.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1607872113
ジスルバノトヤコブ遺跡では多くの考古学的成果が得られており、このブログでも何度か取り上げました。効率的・組織的方法によるダマジカの定期的な狩猟・解体(関連記事)や、ユーラシアでは最初期となりそうな管理された火の使用(関連記事)や、アシューリアン石器製作における計画性・先見性(関連記事)や、一定水準以上の空間認識能力(関連記事)です。後のホモ属であるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や現代人と比較してどうなのか、また後のホモ属との系統関係についてはっきりとは分かりませんが、ジスルバノトヤコブ遺跡の中期更新世の人類(ほぼ間違いなくホモ属でしょう)が、現代人とも通ずる一定水準以上の認知能力を有していたことは間違いないようです。
この研究は、ジスルバノトヤコブ遺跡で発見された78万年前頃の植物群について報告しています。この植物群は55の分類群から構成され、堅果・果物・種子・葉・根茎などを含んでいます。これらのなかには、そのままでは人間が食べられない(きわめて食べづらい)ものや有毒なものも含まれていますが、上述したように、ジスルバノトヤコブ遺跡ではすでに火が人間の管理下で使用されていました。そのため、火の使用により植物を無毒化・食べやすくすることで、植物は人間の食資源としてさらに利用価値が高まったのではないか、と指摘されています。もちろん、ジスルバノトヤコブ遺跡では、植物だけではなく水生および陸生の動物も食べられており、多様な食性から季節性も指摘されています。
また、ジスルバノトヤコブ遺跡に関しては、中期更新世初期の時点で、人類がアフリカとは異なる環境によく適応する能力を有していたことが指摘されており、その観点から人類の拡散と出アフリカも把握されています。中期更新世初期には、すでに人類はアフリカだけではなく広くユーラシアに拡散していました。人類の確実な出アフリカは、現時点では185万年前頃までさかのぼり(関連記事)、今後さらにさかのぼる可能性は高いでしょう。185万年前頃と78万年前頃とでは、人類の認知能力にかなりの違いがあったのかもしれませんが、すでに200万年前頃の時点で、現代人につながる系統の人類には、ある程度以上の認知能力が存在したのでしょう。
参考文献:
Melamed Y. et al.(2016): The plant component of an Acheulian diet at Gesher Benot Ya‘aqov, Israel. PNAS, 113, 51, 14674–14679.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1607872113
この記事へのコメント
いつもこまめな更新お疲れ様です。ありがとうございます。
BS-TBSで「生物大絶滅と縄文人の謎」なる紀行番組が今日から2夜連続で放送されるそうです。
民放だけあって、最先端の研究よりも、わかりやすいストーリー優先なのかな、という感じですが…。
http://www.bs-tbs.co.jp/mysterious-america/
今回の記事と直接には関係のないことですみません。
情報提供いただいた番組は、録画して視聴する予定です。ありがとうございました。