南コーカサスにおける中部旧石器時代~上部旧石器時代の移行年代
今年(2016年)9月14日~18日にかけてマドリードで開催された人間進化研究ヨーロッパ協会の第6回総会で、南コーカサスにおける中部旧石器時代~上部旧石器時代の移行年代に関する研究(Frouina et al., 2016)が報告されました。この研究の要約は、PDFファイルで読めます(P99)。コーカサス地域は、出アフリカ後の現生人類(Homo sapiens)の重要な拡散経路だった、と考えられています。そのため、コーカサス地域における中部旧石器時代~上部旧石器時代の移行は、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類との「交替劇」を理解するうえで重要となります。
中部旧石器時代において、コーカサス地域は生物地理学的障壁により南北に分断されており、(コーカサス地域における中部旧石器文化の担い手と考えられる)ネアンデルタール人集団は孤立して存在していたようです。その根拠となるのが、北コーカサスと南コーカサスの石器群の違いで、北コーカサスの石器群が東ヨーロッパやクリミアの石器群との類似性を示す一方で、南コーカサスの石器群はレヴァントやザグロス地域の石器群との類似性を示しています。
コーカサス地域の上部旧石器時代の人骨はほとんど発見されていないので、その担い手が確定したとまでは言えないようですが、現生人類と考えられています。コーカサス地域では、中部旧石器時代と上部旧石器時代の間に「移行的な石器文化」が確認されていないので、ネアンデルタール人と現生人類との間で接触はほとんどなく、急速に中部旧石器時代から上部旧石器時代へと移行したのではないか、と考えられています。
この研究は、コーカサス地域における中部旧石器時代~上部旧石器時代への移行について詳細に理解するためには、より精度の高い年代測定が必要だとして、放射性炭素年代測定法とともに、石英粗粒子を用いての光刺激ルミネッセンス法(OSL)と赤外光ルミネッセンス法(IRSL)のように、堆積物に含まれる異なる鉱物にルミネッセンス年代測定法を用いるよう、提言しています。ネアンデルタール人と現生人類との「交替劇」をより詳細に理解するためにも、今後の研究の進展が期待されます。
参考文献:
Frouin T. et al.(2016): Dating the Middle-Upper Palaeolithic Transition in western Georgia (South Caucasus): a multi-method (OSL, IRSL and 14C) approach. The 6th Annual ESHE Meeting.
中部旧石器時代において、コーカサス地域は生物地理学的障壁により南北に分断されており、(コーカサス地域における中部旧石器文化の担い手と考えられる)ネアンデルタール人集団は孤立して存在していたようです。その根拠となるのが、北コーカサスと南コーカサスの石器群の違いで、北コーカサスの石器群が東ヨーロッパやクリミアの石器群との類似性を示す一方で、南コーカサスの石器群はレヴァントやザグロス地域の石器群との類似性を示しています。
コーカサス地域の上部旧石器時代の人骨はほとんど発見されていないので、その担い手が確定したとまでは言えないようですが、現生人類と考えられています。コーカサス地域では、中部旧石器時代と上部旧石器時代の間に「移行的な石器文化」が確認されていないので、ネアンデルタール人と現生人類との間で接触はほとんどなく、急速に中部旧石器時代から上部旧石器時代へと移行したのではないか、と考えられています。
この研究は、コーカサス地域における中部旧石器時代~上部旧石器時代への移行について詳細に理解するためには、より精度の高い年代測定が必要だとして、放射性炭素年代測定法とともに、石英粗粒子を用いての光刺激ルミネッセンス法(OSL)と赤外光ルミネッセンス法(IRSL)のように、堆積物に含まれる異なる鉱物にルミネッセンス年代測定法を用いるよう、提言しています。ネアンデルタール人と現生人類との「交替劇」をより詳細に理解するためにも、今後の研究の進展が期待されます。
参考文献:
Frouin T. et al.(2016): Dating the Middle-Upper Palaeolithic Transition in western Georgia (South Caucasus): a multi-method (OSL, IRSL and 14C) approach. The 6th Annual ESHE Meeting.
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