カナダ先住民の免疫関連遺伝子の進化

 これは12月11日分の記事として掲載しておきます。カナダのファースト・ネーション(先住民の一部)の免疫関連遺伝子の進化に関する研究(Lindo et al., 2016)が公表されました。カナダの一部先住民は、ヨーロッパ系集団との接触後に人口が減少し、その要因が感染症だったとの見解も提示されています。この研究は、ヨーロッパ系集団の到来を境にして、古代と現代の一部先住民のDNAを比較しました。この研究で対象となったのは、現在の行政区分ではブリティッシュコロンビア州の、6000~1000年前頃の住民25人と、現在の住民25人のです。

 その結果、ヨーロッパ人との接触があった後に、カナダの一部先住民の人口は57%減少したことが示唆されています。また、古代人に有利に働くと考えられた免疫系の遺伝子多様体の発現頻度は、現代人において低くなっていました。こうした新たな知見から、19世紀にヨーロッパから到来して流行した感染症と関連している可能性が提示されています。この研究は、その感染症の有力候補として天然痘を挙げていますが、麻疹や結核であった可能性も想定されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝】カナダのファースト・ネーションの免疫関連遺伝子の進化

 カナダのファースト・ネーション(先住民の一部)の免疫系遺伝子の変化が、1800年代のヨーロッパで流行した感染症の到来に関連している可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。

 ファースト・ネーションの人口は、ヨーロッパ人との接触後に減少したが、その大きな要因の1つが感染症であったとする学説が提唱されている。今回、Ripan Malhiの研究グループは、土着コミュニティーの協力を得て、ヨーロッパ人の到来を境にして、古代と現代のファースト・ネーション集団を比較した。Malhiたちは、約1,000~6,000年前のブリティッシュコロンビア州に居住していた25人と現在のブリティッシュコロンビア州に居住している25人のDNAを解析した。また、今回の研究では、ヨーロッパ人との接触があった後に人口が57%減少したことも示唆されている。古代人に有利に働くと考えられた免疫系の遺伝子バリアントの発現頻度は、現代人において低くなっていた。

 以上の新知見は、1800年代にヨーロッパから到来して流行した感染症と関連している可能性がある。Malhiたちは、その感染症の有力候補として天然痘を挙げているが、麻疹や結核であった可能性もある。



参考文献:
Lindo J. et al.(2016): A time transect of exomes from a Native American population before and after European contact. Nature Communications, 7, 13175.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms13175

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