アフリカ東部における中期更新世の大規模噴火

 これは11月2日分の記事として掲載しておきます。アフリカ東部における中期更新世(781000~126000年前頃)の大規模噴火に関する研究(Hutchison et al., 2016)が報道されました。中期更新世のアフリカ東部は、現生人類(Homo sapiens)の出現の理解に重要となります。人類の進化や文化変容に環境変動が重要な役割を果たしているだろう、ということは広く認められているでしょうから、古環境の復元は人類進化の研究に必要不可欠と言えるでしょう。近年の研究では、アフリカ東部における乾燥した氷期と湿潤な間氷期という短期間の変動が、人類の進化と文化変容に重要な役割を果たしてきた、と論じる傾向にあります。

 この研究は、もっと広い視点から、中期更新世のアフリカ東部における環境変動について検証しています。この研究が取り上げたのは、エチオピアの大地溝帯における巨大噴火の痕跡です。火山性噴出物があることから、アルゴン-アルゴン法が用いられて、年代が測定されました。その結果、32万~17万年前頃の間には、巨大噴火の頻度が高く、少なくとも4回起きたことが確認されました。これにより、カルデラの形成など、地形・生態系の大きな変化が生じ、現生人類の出現にも影響を与えたのではないか、というわけです。

 大規模な噴火は環境への影響も大きいので、人類進化の研究で重要となってきます。また、噴火物の分析により年代が推定できることも、人類進化の解明において噴火の研究の大きな利点と言えるでしょう。巨大噴火により人口が減少したこともあったはずで、それが現生人類の遺伝的多様性の低さの一因になっているのかもしれません。今後、過去の噴火も含めて古環境の研究が進展し、人類進化の様相がより詳細に解明されることを期待しています


参考文献:
Hutchison W. et al.(2016): A pulse of mid-Pleistocene rift volcanism in Ethiopia at the dawn of modern humans. Nature Communications, 7, 13192.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms13192

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