チンパンジー社会におけるストレスと仲間の関係

 これは11月16日分の記事として掲載しておきます。チンパンジー社会におけるストレスと仲間の関係についての研究(Wittig et al., 2016)が公表されました。肉体的ストレスと心理的ストレスは、身体の多くの生活機能を調節する神経内分泌系の主たる要素の視床下部-下垂体-副腎皮質軸を撹乱することがあります。ヒトの場合、社会的相互作用がストレスの影響を和らげることがありますが、他の動物においてストレスがどのように調節されているのか、それほどよく分かっていませんでした。

 この研究は、17匹の野生のチンパンジーが安静・毛繕い・ストレスのかかる経験をした後で、尿に含まれるグルココルチコイド(ストレス関連ホルモンの一種)の濃度を測定して比較しました。この実験では、ライバルのチンバンジーの群れと自然に出会うことと、ライバルのチンパンジーが木を叩くさいと似た音を実験者が発することがストレスのかかる経験とされましたが、いずれも同じような行動反応を生み出しました。ストレスのかかる事象において、チンパンジーの社会的絆のパートナーがその場にいた時には、グルココルチコイド濃度の上昇が抑制され、社会的パートナーに毛繕いをしてもらった後のグルココルチコイド濃度は、安静後の測定値を下回りました。こうしたことから、社会的相互作用がストレスのレベルを下げる上で重要な役割を果たし、健康の維持にとって重要な役割を果たしている可能性がある、と示唆されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【動物行動】友人の助けによって苦境を乗り切るチンパンジー

 野生のチンパンジーは、社会的パートナーがいるとストレスホルモンの濃度が低いことを報告する論文が、今週に掲載される。こうしたストレスホルモン濃度の低さは、ストレスのかかる状況とストレスのない状況のいずれにおいても観察されており、社会的絆の恩恵を受けるのが激しいストレスを感じる時だけではないことも明らかになった。

 肉体的ストレスと心理的ストレスは、身体の多くの生活機能を調節する神経内分泌系の主たる要素である視床下部-下垂体-副腎皮質軸を撹乱することがある。ヒトの場合、社会的相互作用がストレスの影響を和らげることがあるが、他の動物においてストレスがどのように調節されているのか、という点はそれほどよく分かっていない。

 今回、Roman Wittigの研究チームは、17匹の野生のチンパンジーが安静、毛繕いやストレスのかかる経験をした後で、尿に含まれるグルココルチコイド(ストレス関連ホルモンの一種)の濃度を測定し、比較した。この実験では、ライバルのチンバンジーの群れと自然に出会うことと、実験者がライバルのチンパンジーが木を叩く音を真似して発することをストレスのかかる経験としたが、いずれも同じような行動反応を生み出した。ストレスのかかる事象においてチンパンジーの社会的絆のパートナーがその場にいた時には、グルココルチコイド濃度の上昇が抑制され、社会的パートナーに毛繕いをしてもらった後のグルココルチコイド濃度は安静後の測定値を下回った。

 以上の知見は、社会的相互作用がストレスのレベルを下げる上で重要な役割を果たし、健康の維持にとって重要な役割を果たしている可能性のあることも示唆している。



参考文献:
Wittig RM. et al.(2016): Social support reduces stress hormone levels in wild chimpanzees across stressful events and everyday affiliations. Nature Communications, 7, 13361.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms13361

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