米国大統領選
これは11月11日分の記事として掲載しておきます。民主党と共和党の両候補がともに嫌われ者で、中傷合戦もひどかったと言われる今回のアメリカ合衆国大統領選の一般投票では、大方の予想を覆して、共和党のトランプ候補が民主党のクリントン候補を破り、実質的に当選を決めました。じつは、クリントン候補の勝利を想定した予定稿を準備していたのですが、ほとんど使い物にならなくなりました。選挙人獲得数ではトランプ候補が290人にたいしてクリントン候補が228人だったのにたいして、得票率ではトランプ候補が47.5%にたいしてクリントン候補が47.7%で、2000年の大統領選と同じく、選挙人獲得数と得票率の勝者が一致しませんでした。
世論調査ではほぼ終始一貫して、クリントン候補の支持率がトランプ候補を上回っていただけに、本当に意外な結果でした。世論調査が予想を外したことについては、すでに各種報道機関などで、世論調査の信頼性の低下(携帯電話のみの所有者が基本的に調査対象外、回答率の低下など)が指摘されており、もちろん、門外漢の私から新たな論点を提示できるはずもありません。そもそもトランプ候補がなぜ勝ったのか、という点についても多くの人が見解を提示しており、こちらでも門外漢の私が新たな論点を提示できるはずもありませんが、そうした見解のうち、私が説得的だと思ったものを自分なりに簡潔にまとめておきます。
今回の大統領選の結果をポリティカルコレクトネス(PC)の敗北として認識する見解と、そうした見解を嘲笑したり危惧したりする「リベラル派」の見解が私の観測範囲では目につきましたが、PCが今回の大統領選の結果を検証するうえで重要な論点の一つであることは間違いないと思います。投票日前から一部で言われていたことですが、上述した世論調査の信頼性低下の根本的要因とともに懸念・指摘されていたのが、「隠れトランプ支持者」の存在です。PCが定着している米国社会の上層では、トランプ候補への支持を公言しにくく、世論調査がトランプ候補への支持率を実態よりも過小評価してしまうのではないか、というわけです。
また、発言力が大きいというか目立つ、各種報道機関の記者や「識者」は社会上層にいるので、そもそも本気でトランプ候補を忌避する人々や、PCを意識してトランプ候補への支持を公言できないような人々との付き合いが中心になり、どうしてもトランプ候補の支持率を過小評価してしまう認知の偏りに陥ってしまったのかもしれません。米国社会の分断化がそれだけ進んでいるということなのでしょうが、じっさい、今回の大統領選では、クリントン候補がおおむね都市部でしか勝っていない、と指摘されています。
世論調査がおおむね予測を外してしまったことは、このように解釈できるかもしれませんが、それにしても、当初は泡沫候補としか思えず、共和党の予備選で早期に脱落するだろう、と予想していたトランプ候補が実質的に次期大統領に決まるとは、本当に意外でした。クリントン候補がかなり嫌われていることは日本の報道機関でも伝えられていましたが、私の想像以上にクリントン候補は米国社会で嫌われているようです。民主党の予備選でサンダース候補に苦戦したことである程度は理解していたつもりですが、既存支配層・ワシントン政治のインサイダーとしての印象がそれだけ強く、忌避されていた、ということなのでしょう。トランプ候補の勝利は、その政策・人柄への支持というよりは、クリントン候補を忌避する有権者の消極的選択という側面が大きいのかもしれません。
トランプ候補が大統領に就任してどのように政権を運営するのか、予測の難しいところですが、日本国民の多くにとっては、クリントン候補が当選した場合よりも不利益が多いような気はします。これが門外漢のたんなる杞憂に終わればよいのですが。2000年の大統領選の頃より、米国社会の亀裂の深刻さを指摘する見解が目立つようになってきた印象があるのですが、今回の大統領選では、亀裂がますます深まったように思えます。得票率ではクリントン候補がわずかに上回っているわけで、トランプ政権でもこの亀裂が修復されるとは思えず、さらに深まる可能性が高そうです。
大統領選と同時に行なわれた上院選(議席数の1/3の改選)と下院選の結果、民主党の議席数は選挙前より増えたものの(上院では2議席増、下院では6議席増)、両院ともに共和党が過半数を制している状況は変わらないので、この点では、トランプ次期大統領の政権運営には好材料と言えるでしょう。もっとも、トランプ次期大統領は、共和党主流派との関係も悪く、それが「中央政界のアウトサイダー」としての印象を強めて、勝利の一因にもなったのでしょうが、やはり議会対策では苦労しそうで、政権運営が迷走し、一期で政権は終わるのではないか、と思います。あるいは、トランプ次期大統領の年齢からも、一期もたない可能性もありますが、ペンス次期副大統領の手腕次第では、二期目もありえるかもしれません。何とも不安なトランプ政権ですが、発足後は「意外と現実的で穏和」と言われるような運営を願っています。
世論調査ではほぼ終始一貫して、クリントン候補の支持率がトランプ候補を上回っていただけに、本当に意外な結果でした。世論調査が予想を外したことについては、すでに各種報道機関などで、世論調査の信頼性の低下(携帯電話のみの所有者が基本的に調査対象外、回答率の低下など)が指摘されており、もちろん、門外漢の私から新たな論点を提示できるはずもありません。そもそもトランプ候補がなぜ勝ったのか、という点についても多くの人が見解を提示しており、こちらでも門外漢の私が新たな論点を提示できるはずもありませんが、そうした見解のうち、私が説得的だと思ったものを自分なりに簡潔にまとめておきます。
今回の大統領選の結果をポリティカルコレクトネス(PC)の敗北として認識する見解と、そうした見解を嘲笑したり危惧したりする「リベラル派」の見解が私の観測範囲では目につきましたが、PCが今回の大統領選の結果を検証するうえで重要な論点の一つであることは間違いないと思います。投票日前から一部で言われていたことですが、上述した世論調査の信頼性低下の根本的要因とともに懸念・指摘されていたのが、「隠れトランプ支持者」の存在です。PCが定着している米国社会の上層では、トランプ候補への支持を公言しにくく、世論調査がトランプ候補への支持率を実態よりも過小評価してしまうのではないか、というわけです。
また、発言力が大きいというか目立つ、各種報道機関の記者や「識者」は社会上層にいるので、そもそも本気でトランプ候補を忌避する人々や、PCを意識してトランプ候補への支持を公言できないような人々との付き合いが中心になり、どうしてもトランプ候補の支持率を過小評価してしまう認知の偏りに陥ってしまったのかもしれません。米国社会の分断化がそれだけ進んでいるということなのでしょうが、じっさい、今回の大統領選では、クリントン候補がおおむね都市部でしか勝っていない、と指摘されています。
世論調査がおおむね予測を外してしまったことは、このように解釈できるかもしれませんが、それにしても、当初は泡沫候補としか思えず、共和党の予備選で早期に脱落するだろう、と予想していたトランプ候補が実質的に次期大統領に決まるとは、本当に意外でした。クリントン候補がかなり嫌われていることは日本の報道機関でも伝えられていましたが、私の想像以上にクリントン候補は米国社会で嫌われているようです。民主党の予備選でサンダース候補に苦戦したことである程度は理解していたつもりですが、既存支配層・ワシントン政治のインサイダーとしての印象がそれだけ強く、忌避されていた、ということなのでしょう。トランプ候補の勝利は、その政策・人柄への支持というよりは、クリントン候補を忌避する有権者の消極的選択という側面が大きいのかもしれません。
トランプ候補が大統領に就任してどのように政権を運営するのか、予測の難しいところですが、日本国民の多くにとっては、クリントン候補が当選した場合よりも不利益が多いような気はします。これが門外漢のたんなる杞憂に終わればよいのですが。2000年の大統領選の頃より、米国社会の亀裂の深刻さを指摘する見解が目立つようになってきた印象があるのですが、今回の大統領選では、亀裂がますます深まったように思えます。得票率ではクリントン候補がわずかに上回っているわけで、トランプ政権でもこの亀裂が修復されるとは思えず、さらに深まる可能性が高そうです。
大統領選と同時に行なわれた上院選(議席数の1/3の改選)と下院選の結果、民主党の議席数は選挙前より増えたものの(上院では2議席増、下院では6議席増)、両院ともに共和党が過半数を制している状況は変わらないので、この点では、トランプ次期大統領の政権運営には好材料と言えるでしょう。もっとも、トランプ次期大統領は、共和党主流派との関係も悪く、それが「中央政界のアウトサイダー」としての印象を強めて、勝利の一因にもなったのでしょうが、やはり議会対策では苦労しそうで、政権運営が迷走し、一期で政権は終わるのではないか、と思います。あるいは、トランプ次期大統領の年齢からも、一期もたない可能性もありますが、ペンス次期副大統領の手腕次第では、二期目もありえるかもしれません。何とも不安なトランプ政権ですが、発足後は「意外と現実的で穏和」と言われるような運営を願っています。
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