現生人類においてネアンデルタール人由来の遺伝子が除去された理由
現生人類(Homo sapiens)においてネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来の遺伝子が除去された理由についての研究(Juric et al., 2016)が報道されました。非アフリカ系現代人のゲノムには、わずかながら(常染色体において1.5~2.1%)ネアンデルタール人由来の領域が確認されています。これは、出アフリカ後の現生人類集団のみがネアンデルタール人と交雑した結果と考えられています。この研究は、非アフリカ系現代人のゲノムに見られるネアンデルタール人由来と推定される対立遺伝子頻度の推定から、この問題を検証しています。
すでに、ネアンデルタール人は現生人類よりも人口規模が小さく、そのためにネアンデルタール人由来の遺伝子が現生人類において除去された、という見解が提示されています(関連記事)。小規模な集団では大規模な集団よりも近親交配の頻度が高まり、弱い有害な(適応度を下げる)遺伝的変異を除去する選択圧が弱まる傾向にあるからです。この研究もその見解を改めて支持しており、より小規模な集団であるネアンデルタール人では除去されなかった(強い選択圧に曝されなかった)弱い有害な遺伝的変異が、交雑の結果より大規模な集団である現生人類に浸透すると除去される、と指摘しています。両者の交雑の初期世代では、ネアンデルタール人においては潜在的だった遺伝的負荷が顕在化するのではないか、というわけです。
現生人類のゲノムにおいてネアンデルタール人由来の領域の割合が低水準になった理由として、交雑のさいの両者の遺伝的不適合も指摘されています(関連記事)。しかしこの研究は、ネアンデルタール人と現生人類との長期間の人口規模の違いの方を重視しています。ただ、人口規模の違いですべてを説明すると断定はできない、と本論文の筆頭著者であるジュリック(Ivan Juric)博士は慎重な姿勢を示しています。交雑のさいの両者の遺伝的不適合や性選択など何らかの選択が作用したかもしれない、というわけです。またこの研究は、ヨーロッパ系現代人よりも東アジア系現代人のゲノムにおいて、ネアンデルタール人由来の領域の割合がわずかに高いことを改めて確認するとともに、ネアンデルタール人が現生人類からかなりの量の適応的な遺伝的変異を得た可能性も指摘しています。
参考文献:
Juric I, Aeschbacher S, Coop G (2016) The Strength of Selection against Neanderthal Introgression. PLoS Genet 12(11): e1006340.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pgen.1006340
すでに、ネアンデルタール人は現生人類よりも人口規模が小さく、そのためにネアンデルタール人由来の遺伝子が現生人類において除去された、という見解が提示されています(関連記事)。小規模な集団では大規模な集団よりも近親交配の頻度が高まり、弱い有害な(適応度を下げる)遺伝的変異を除去する選択圧が弱まる傾向にあるからです。この研究もその見解を改めて支持しており、より小規模な集団であるネアンデルタール人では除去されなかった(強い選択圧に曝されなかった)弱い有害な遺伝的変異が、交雑の結果より大規模な集団である現生人類に浸透すると除去される、と指摘しています。両者の交雑の初期世代では、ネアンデルタール人においては潜在的だった遺伝的負荷が顕在化するのではないか、というわけです。
現生人類のゲノムにおいてネアンデルタール人由来の領域の割合が低水準になった理由として、交雑のさいの両者の遺伝的不適合も指摘されています(関連記事)。しかしこの研究は、ネアンデルタール人と現生人類との長期間の人口規模の違いの方を重視しています。ただ、人口規模の違いですべてを説明すると断定はできない、と本論文の筆頭著者であるジュリック(Ivan Juric)博士は慎重な姿勢を示しています。交雑のさいの両者の遺伝的不適合や性選択など何らかの選択が作用したかもしれない、というわけです。またこの研究は、ヨーロッパ系現代人よりも東アジア系現代人のゲノムにおいて、ネアンデルタール人由来の領域の割合がわずかに高いことを改めて確認するとともに、ネアンデルタール人が現生人類からかなりの量の適応的な遺伝的変異を得た可能性も指摘しています。
参考文献:
Juric I, Aeschbacher S, Coop G (2016) The Strength of Selection against Neanderthal Introgression. PLoS Genet 12(11): e1006340.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pgen.1006340
この記事へのコメント