縄文時代の人類の核DNA解析
縄文時代の人類の核DNA解析結果を報告した研究(Kanzawa-Kiriyama et al., 2017)が報道されました。NHKでも報道されています。解説も公表されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、福島県相馬郡新地町の三貫地貝塚の縄文時代(3000年前頃)の人類2人(男性と女性)の歯から核DNAのうち1億1500万塩基対を解析し、現代人や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)も含む他の古代人と比較しています。これは、縄文時代の人類の核DNAの解析としては初の報告となります。なお、三貫地縄文人のミトコンドリアDNAのハプログループは、他の縄文人に関しても報告されていたN9bに分類されます。
三貫地縄文人と現代人・他の古代人とのゲノムの比較の結果、三貫地縄文人は現代東ユーラシア集団の多様化の前に分岐し、他の大陸集団との間に遺伝子流動はなかった、と推測されました。現代人の各地域集団で三貫地縄文人と遺伝的に最も近縁なのはアイヌ人で、次に沖縄の琉球人、その次に東京周辺の集団でした。アイヌ人と沖縄の人々を除く現代の「本土日本人」に継承された縄文人ゲノムの割合は15%程度と推定されています。この研究は、現代日本人が縄文人と弥生時代以降の渡来系との交雑の結果として形成されたことが改めて確認された、と指摘しています。また、ネアンデルタール人やデニソワ人との比較では、三貫地縄文人は他の非アフリカ系現代人と比較して、遺伝的類似性に大きな差はないそうです。
現時点では、縄文人の祖先集団は他の東ユーラシア集団と早期に分岐した後に日本列島に渡来し、遺伝的には比較的孤立して縄文時代の日本列島に居住し続けた後、弥生時代以降に渡来系と交雑し、現代の「本土日本人」が形成された、と考えられます。縄文時代の日本列島の人口は少ないと推定されており、弥生時代以降の渡来系も人数自体はさほど多くなかったのでしょうが、経済(本格的な水稲耕作)や文化(本格的な戦争文化)での優越により、縄文時代以来の在来系よりも人口増加率が高かった、ということなのかもしれません。ただ、縄文人とはいっても、年代は長期にわたり、地域は広範ですから、その遺伝的特徴は年代・地域によりかなり多様だったかもしれません。その意味で、縄文時代やその前後の時代の古代人のゲノム解析数が蓄積され、研究が進展することを期待しています。
参考文献:
Kanzawa-Kiriyama H. et al.(2017): A partial nuclear genome of the Jomons who lived 3000 years ago in Fukushima, Japan. Journal of Human Genetics, 62, 2, 213–221.
http://dx.doi.org/10.1038/jhg.2016.110
三貫地縄文人と現代人・他の古代人とのゲノムの比較の結果、三貫地縄文人は現代東ユーラシア集団の多様化の前に分岐し、他の大陸集団との間に遺伝子流動はなかった、と推測されました。現代人の各地域集団で三貫地縄文人と遺伝的に最も近縁なのはアイヌ人で、次に沖縄の琉球人、その次に東京周辺の集団でした。アイヌ人と沖縄の人々を除く現代の「本土日本人」に継承された縄文人ゲノムの割合は15%程度と推定されています。この研究は、現代日本人が縄文人と弥生時代以降の渡来系との交雑の結果として形成されたことが改めて確認された、と指摘しています。また、ネアンデルタール人やデニソワ人との比較では、三貫地縄文人は他の非アフリカ系現代人と比較して、遺伝的類似性に大きな差はないそうです。
現時点では、縄文人の祖先集団は他の東ユーラシア集団と早期に分岐した後に日本列島に渡来し、遺伝的には比較的孤立して縄文時代の日本列島に居住し続けた後、弥生時代以降に渡来系と交雑し、現代の「本土日本人」が形成された、と考えられます。縄文時代の日本列島の人口は少ないと推定されており、弥生時代以降の渡来系も人数自体はさほど多くなかったのでしょうが、経済(本格的な水稲耕作)や文化(本格的な戦争文化)での優越により、縄文時代以来の在来系よりも人口増加率が高かった、ということなのかもしれません。ただ、縄文人とはいっても、年代は長期にわたり、地域は広範ですから、その遺伝的特徴は年代・地域によりかなり多様だったかもしれません。その意味で、縄文時代やその前後の時代の古代人のゲノム解析数が蓄積され、研究が進展することを期待しています。
参考文献:
Kanzawa-Kiriyama H. et al.(2017): A partial nuclear genome of the Jomons who lived 3000 years ago in Fukushima, Japan. Journal of Human Genetics, 62, 2, 213–221.
http://dx.doi.org/10.1038/jhg.2016.110
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