代謝や老化に影響するミトコンドリアDNA

 これは9月17日分の記事として掲載しておきます。ミトコンドリアDNAの代謝や老化への影響に関する研究(Latorre-Pellicer et al., 2016)が公表されました。この研究は、マウスを用いて、ミトコンドリアが、インスリンシグナル伝達・肥満・テロメアの短縮などといったさまざまな生理学的性質に強い影響を及ぼし、その結果平均生存期間に違いが出ることを明らかにしました。病的ではないミトコンドリアDNA多様体でも代謝では幅広い影響をもたらし、高齢期になるとその影響が大きく現れます。この研究は、ミトコンドリアゲノムと核ゲノムとの相互作用がこの現象に影響する大きな要因かもしれない、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


遺伝学:ミトコンドリアDNAと核DNAのマッチングが代謝の形を決め、健康な老化をもたらす

遺伝学:ミトコンドリアDNAは代謝や老化に影響する

 今回、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の配列のばらつきの影響が、J Enríquezたちによってマウスのコンプラスティック系統を用いて調べられた。コンプラスティックなマウスは、同一の核ゲノムを持つが、ミトコンドリアDNAは異なっている。そして、ミトコンドリアゲノムは、インスリンシグナル伝達、肥満、テロメアの短縮などのさまざまな生理学的性質に強い影響を及ぼし、その結果平均生存期間に違いが出ることが明らかになった。従って、病的なものではないmtDNAバリアントでも代謝に対しては幅広い影響をもたらし、高齢期になるとその影響が大きく現れる。著者たちは、ミトコンドリアゲノムと核ゲノムとの相互作用がこの現象に影響する重要な要因かもしれないと考えている。このことは、ミトコンドリア置換療法の分野に大きく関係してきそうだ。



参考文献:
Latorre-Pellicer A. et al.(2016): Mitochondrial and nuclear DNA matching shapes metabolism and healthy ageing. Nature, 535, 7613, 561–565.
http://dx.doi.org/10.1038/nature18618

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