近藤成一『シリーズ日本中世史2 鎌倉幕府と朝廷』

 これは8月24日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年3月に刊行されました。すでに第1巻はこのブログで取り上げています。本書は治承・寿永の乱から鎌倉幕府の滅亡までを扱っています。表題にあるように、鎌倉幕府と朝廷を中心にこの時代を解説しており、おもに政治史中心の叙述となっています。裁判に関する解説が多いのも特徴で、法制史にもそれなりに分量が割かれています。本書が対象とする期間の大事件となると、何と言ってもモンゴル襲来となります。そのため本書では、外交史や東アジア史にもそれなりに分量が割かれています。

 このように、本書は基本的には政治史を中心とした概説になっており、経済史や(宗教史も含めての)文化史に関する叙述はほぼありません。ただ、文化史に関しては、本シリーズの第一巻『シリーズ日本中世史1 中世社会の始まり』にて詳しく解説されているので、とくに問題はないと思います。「とがった」概説もあるなか、本書のように政治史に特化した堅実な概説があってもよいと思いますし、本書は新書ながらも、鎌倉時代の政治史としてなかなか密度が濃いと言えるでしょう。

 悪党の実態に関して、本所による荘園支配再編の動きから排除された者たちだ、との見解が注目されます。都から遠く離れた鎌倉の地で武家政権が樹立されたことが、鎌倉幕府の性格、さらにはその後の朝廷と幕府(武家政権)との関係を規定した、との指摘は、かなりのところ本質を突いているのではないか、と思います。朝廷と幕府との並立は明治維新まで続くわけですが、その形が作られたのは鎌倉時代である、と本書は指摘しています。鎌倉時代は、その後の前近代日本史の流れに大きな影響を及ぼした、と言えそうです。

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