アイスマンの衣服
これは8月21日分の記事として掲載しておきます。アイスマンの衣服に関する研究(O’Sullivan et al., 2016)が報道されました。1991年にイタリアのエッツタールアルプスで発見された5300年前頃のミイラは「アイスマン(愛称エッツィ)」と呼ばれています。アイスマンの状態は良好だったので、遺伝学などさまざまな分野の研究が進んでいます。この研究は、アイスマンの衣服と矢筒に由来する9点の皮革断片のミトコンドリアDNAを解析し、どの動物種の皮革断片なのか、明らかにしました。
その結果、アイスマンの帽子と矢筒には、それぞれ野生のヒグマとノロジカが用いられている、と明らかになりました。ヒグマのDNA解析の結果、現在もエッツタールアルプスにいるヒグマと同系統であることが分かりました。これまでの研究でアイスマンが畑作と牧畜を行っていたことは明らかになっていますが、この結果により、野生動物の狩猟・捕獲も行なわれていただろう、との見解が提示されています。
アイスマンの着ていたコートは、ヤギとヒツジの少なくとも4種類の毛皮を寄せ集めたものであることも明らかになっており、入手可能だった素材を使って場当たり的に縫い合わせて衣服を作っていたことが示唆されています。このヒツジは野生の羊よりも現代ヨーロッパの家畜化されたヒツジに近く、少なくとも4頭が使われているそうです。ヤギの方は、現代中央ヨーロッパの山や谷にいるヤギと同じハプログループに属していることが明らかになりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【考古学】アイスマンの衣服は何からできていたのかブックマーク
チロルのアイスマンの衣服と矢筒に関して、その製作に用いられた動物種を明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究は、その衣服と矢筒が少なくとも5種類の動物の素材を用いて作られており、帽子にはヒグマが用いられ、矢筒はノロジカの毛皮でできていたことを示唆している。
5,300年前の自然のミイラで、「エッツィ」という愛称で知られるチロルのアイスマンは、1991年にイタリアのエッツタールアルプスで発見され、20年間の分析によってエッツィの祖先、食事、道具、生活様式、健康状態、服装に関する手掛かりが得られた。エッツィの保存状態は比較的良好なのだが、どのような動物種を使って衣服を作ったのかという点がほんど分かっていない。
今回、Niall O’Sullivanたちは、エッツィの衣服と矢筒に由来する9点の皮革断片のミトコンドリアゲノムの塩基配列を解読、解析することで、どの動物種の皮革断片なのかを明らかにした。そして、エッツィの帽子と矢筒には、それぞれ野生のヒグマとノロジカが用いられていることが判明した。エッツィが畑作と牧畜を行っていたことは、これまでの研究で断定されているが、O’Sullivanたちは、この帽子と矢筒が野生動物の狩猟と捕獲が行われていたことの証拠だとする見方を示している。
また、エッツィが着ていたコートが2種の動物(ヤギとヒツジ)の少なくとも4種類の毛皮を寄せ集めたものであることも判明したが、このことは、当時入手可能だった素材を使って場当たり的に縫い合わせて衣服を作っていたことを示唆している。エッツィのゲートルはヤギの革でできていることが分かったが、以上の研究結果は、銅器時代の人々が衣服を作る際に衣服の特質に応じて素材となる動物種を選んでいたとする仮説を裏付けている。
参考文献:
O’Sullivan NJ. et al.(2016): A whole mitochondria analysis of the Tyrolean Iceman’s leather provides insights into the animal sources of Copper Age clothing. Scientific Reports, 6, 31279.
http://dx.doi.org/10.1038/srep31279
その結果、アイスマンの帽子と矢筒には、それぞれ野生のヒグマとノロジカが用いられている、と明らかになりました。ヒグマのDNA解析の結果、現在もエッツタールアルプスにいるヒグマと同系統であることが分かりました。これまでの研究でアイスマンが畑作と牧畜を行っていたことは明らかになっていますが、この結果により、野生動物の狩猟・捕獲も行なわれていただろう、との見解が提示されています。
アイスマンの着ていたコートは、ヤギとヒツジの少なくとも4種類の毛皮を寄せ集めたものであることも明らかになっており、入手可能だった素材を使って場当たり的に縫い合わせて衣服を作っていたことが示唆されています。このヒツジは野生の羊よりも現代ヨーロッパの家畜化されたヒツジに近く、少なくとも4頭が使われているそうです。ヤギの方は、現代中央ヨーロッパの山や谷にいるヤギと同じハプログループに属していることが明らかになりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【考古学】アイスマンの衣服は何からできていたのかブックマーク
チロルのアイスマンの衣服と矢筒に関して、その製作に用いられた動物種を明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究は、その衣服と矢筒が少なくとも5種類の動物の素材を用いて作られており、帽子にはヒグマが用いられ、矢筒はノロジカの毛皮でできていたことを示唆している。
5,300年前の自然のミイラで、「エッツィ」という愛称で知られるチロルのアイスマンは、1991年にイタリアのエッツタールアルプスで発見され、20年間の分析によってエッツィの祖先、食事、道具、生活様式、健康状態、服装に関する手掛かりが得られた。エッツィの保存状態は比較的良好なのだが、どのような動物種を使って衣服を作ったのかという点がほんど分かっていない。
今回、Niall O’Sullivanたちは、エッツィの衣服と矢筒に由来する9点の皮革断片のミトコンドリアゲノムの塩基配列を解読、解析することで、どの動物種の皮革断片なのかを明らかにした。そして、エッツィの帽子と矢筒には、それぞれ野生のヒグマとノロジカが用いられていることが判明した。エッツィが畑作と牧畜を行っていたことは、これまでの研究で断定されているが、O’Sullivanたちは、この帽子と矢筒が野生動物の狩猟と捕獲が行われていたことの証拠だとする見方を示している。
また、エッツィが着ていたコートが2種の動物(ヤギとヒツジ)の少なくとも4種類の毛皮を寄せ集めたものであることも判明したが、このことは、当時入手可能だった素材を使って場当たり的に縫い合わせて衣服を作っていたことを示唆している。エッツィのゲートルはヤギの革でできていることが分かったが、以上の研究結果は、銅器時代の人々が衣服を作る際に衣服の特質に応じて素材となる動物種を選んでいたとする仮説を裏付けている。
参考文献:
O’Sullivan NJ. et al.(2016): A whole mitochondria analysis of the Tyrolean Iceman’s leather provides insights into the animal sources of Copper Age clothing. Scientific Reports, 6, 31279.
http://dx.doi.org/10.1038/srep31279
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