社会的評判と社会的協力の関係
これは8月14日分の記事として掲載しておきます。社会的評判と社会的協力の関係についての研究(Grimalda et al., 2016)が公表されました。人間が社会においてきわだった評判を得たいと望むことは、人間の協力行動の進化的基盤の一例とされています。現時点でこの証拠は、コンピューターシミュレーションなど、人間の社会的イメージを研究室で人工的に作り出すことによって得られています。この研究は、パプアニューギニアのテオプという結束の固い小規模な社会における人間の協力行動を調査しました。テオプの社会構造は、構成員に規律を課すインフォーマルな権威を有している村の長老(ビッグマン)が中心になっています。ビッグマンは、道徳の守護者として行動し、テオプの社会的ネットワークの中心に位置しています。
この研究では、ビッグマンが介入せずに見守るだけの状況下で、テオプの人々に社会経済的なゲームを行わせる実験が行なわれました。その結果、テオプの人々は効率的に協力してゲームを行ないました。一方、見知らぬビッグマンが別の村からやってきてゲームの様子を見守った場合には、こうした協力行動は少なくなりました。また、ビッグマンが見守っていると、ゲームのプレーヤーが非協力的な構成員を罰することが少なくなりました。こうした結果は、社会的権威を有する実在の人物が自分に対して抱く社会的イメージを気にすることの方が、自分の評判を想像して気にすることよりも協力行動を促進することを明らかにしている、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【進化】良い評判を得たいという気持ちが社会的協力を促進する
人間は自分が権威者にどう思われているのかを気にしており、それが他人との協力を助長する可能性のあることがパプアニューギニアの狩猟採集社会の研究で明らかになった。また、今回の研究では、社会的評判が良くなることの方が非協力者を処罰することよりも協力行動を促進する効果が大きいことが示唆されている。この研究成果について報告する論文が、今週掲載される。
人間が社会において際立った評判を得たいと望むことは、人間の協力行動の進化的基盤の一例だ。この人間行動を示す証拠は、これまでのところ、人間の社会的イメージを研究室で(例えば、コンピューターシミュレーションによって)人工的に作り出すことによって得られている。
今回、Gianluca Grimaldaたちは、パプアニューギニアのテオプという結束の固い小規模な社会における人間の協力行動を調べた。テオプの社会構造は、構成員に規律を課すインフォーマルな権威を有している村の長老(いわゆる「ビッグマン」)が中心になっている。ビッグマンは、道徳の守護者として行動し、テオプの社会的ネットワークの中心に位置している。今回の研究では、ビッグマンが介入せずに見守るだけの状況下で、テオプの人々に社会経済的なゲームを行わせる実験が行われた。そして、テオプの人々は効率的に協力してゲームを行った。これに対して、見知らぬビッグマンが別の村からやってきてゲームの様子を見守った場合には、こうした協力行動は少なくなった。また、ビッグマンが見守っていると、ゲームのプレーヤーが非協力的な構成員を罰することが少なくなった。
以上の結果は、社会的権威を有する実在の人物が自分に対して抱く社会的イメージを気にすることの方が、自分の評判を想像して気にすることよりも協力行動を促進することを明らかにしている。
参考文献:
Grimalda G, Pondorfer A, and Tracer DP.(2016): Social image concerns promote cooperation more than altruistic punishment. Nature Communications, 7, 12288.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms12288
この研究では、ビッグマンが介入せずに見守るだけの状況下で、テオプの人々に社会経済的なゲームを行わせる実験が行なわれました。その結果、テオプの人々は効率的に協力してゲームを行ないました。一方、見知らぬビッグマンが別の村からやってきてゲームの様子を見守った場合には、こうした協力行動は少なくなりました。また、ビッグマンが見守っていると、ゲームのプレーヤーが非協力的な構成員を罰することが少なくなりました。こうした結果は、社会的権威を有する実在の人物が自分に対して抱く社会的イメージを気にすることの方が、自分の評判を想像して気にすることよりも協力行動を促進することを明らかにしている、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【進化】良い評判を得たいという気持ちが社会的協力を促進する
人間は自分が権威者にどう思われているのかを気にしており、それが他人との協力を助長する可能性のあることがパプアニューギニアの狩猟採集社会の研究で明らかになった。また、今回の研究では、社会的評判が良くなることの方が非協力者を処罰することよりも協力行動を促進する効果が大きいことが示唆されている。この研究成果について報告する論文が、今週掲載される。
人間が社会において際立った評判を得たいと望むことは、人間の協力行動の進化的基盤の一例だ。この人間行動を示す証拠は、これまでのところ、人間の社会的イメージを研究室で(例えば、コンピューターシミュレーションによって)人工的に作り出すことによって得られている。
今回、Gianluca Grimaldaたちは、パプアニューギニアのテオプという結束の固い小規模な社会における人間の協力行動を調べた。テオプの社会構造は、構成員に規律を課すインフォーマルな権威を有している村の長老(いわゆる「ビッグマン」)が中心になっている。ビッグマンは、道徳の守護者として行動し、テオプの社会的ネットワークの中心に位置している。今回の研究では、ビッグマンが介入せずに見守るだけの状況下で、テオプの人々に社会経済的なゲームを行わせる実験が行われた。そして、テオプの人々は効率的に協力してゲームを行った。これに対して、見知らぬビッグマンが別の村からやってきてゲームの様子を見守った場合には、こうした協力行動は少なくなった。また、ビッグマンが見守っていると、ゲームのプレーヤーが非協力的な構成員を罰することが少なくなった。
以上の結果は、社会的権威を有する実在の人物が自分に対して抱く社会的イメージを気にすることの方が、自分の評判を想像して気にすることよりも協力行動を促進することを明らかにしている。
参考文献:
Grimalda G, Pondorfer A, and Tracer DP.(2016): Social image concerns promote cooperation more than altruistic punishment. Nature Communications, 7, 12288.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms12288
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