現生人類に特異的な自閉症関連遺伝子

 現生人類(Homo sapiens)に特異的な自閉症関連遺伝子についての研究(Nuttle et al., 2016)が公表されました。この研究は、現生人類・チンパンジー・オランウータンについて、自閉症や発育遅延との関連が指摘されている、染色体16p11.2にある一つのゲノム領域の進化史を再構築しました。その結果、この座位にある遺伝子BOLA2が、現生人類で特異的に重複していることが明らかになりました。この重複が起こったのは28万年前頃で、この重複は現生人類系統の初期にほぼ固定され、新しいインフレーム融合転写産物が生じた、と推定されています。現生人類の認知能力とも関わるかもしれないだけに、今後の研究の進展が期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化遺伝学:ホモ・サピエンスに特異的な遺伝子ファミリーと染色体16p11.2のCNV感受性の出現

進化遺伝学:ある自閉症関連遺伝子の進化史

 今回E Eichlerたちは、ホモ・サピエンス、チンパンジーおよびオランウータンについて、染色体16p11.2にある1つのゲノム領域の進化史を再構築した。この座位は、構造に広範な多様性があるために特徴の解析が難しいが、自閉症や発育遅延との関連など、さまざまな理由から関心の的となっている。著者たちは、この座位にある遺伝子BOLA2が、ホモ・サピエンスで特異的に重複していることを明らかにした。重複が起こったのは約28万年前で、この重複はヒト系統の初期にほぼ固定され、新しいインフレーム融合転写産物が生じたと推定される。



参考文献:
Nuttle X. et al.(2016): Emergence of a Homo sapiens-specific gene family and chromosome 16p11.2 CNV susceptibility. Nature, 536, 7615, 205–209.
http://dx.doi.org/10.1038/nature19075

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック