複数の形質に影響する遺伝学的多様体

 これは7月7日分の記事として掲載しておきます。複数の形質に影響する遺伝学的多様体に関する研究(Pickrell et al., 2016)が公表されました。全ゲノム関連解析を実施すると、一つの形質と統計的に関連する遺伝学的多様体、およびその形質をもたらす過程に関係している可能性のある遺伝学的多様体を同定できます。また、複数の形質に関連する多様体は、遺伝子の分子機能と複数の形質間の関係に関して手掛かりをもたらすことがあります。しかし、これまでの複数の形質に関する研究の大部分は、関連のあることがすでに指摘されていた形質を対象としていました。

 この研究は、大規模なデータセットが存在する形質や疾患(合計42種)の全ゲノム関連解析データを解析して、遺伝学的な重複を同定しました。こうした形質や疾患には、身長・肥満度指数(BMI)・鼻の大きさなどの計測的形質、アルツハイマー病・パーキンソン病などの神経疾患、小児耳感染症・小児扁桃摘出などの感染症への感受性が含まれています。その結果、少なくとも二つの形質と関連するゲノム変異部位が341ヶ所判明しました。

 たとえば、少女の初潮年齢が遅いことに関連する複数の多様体は、少年の声が低くなる年齢が遅いこと・BMIが低いこと・男女両方における身長の伸び・男性型脱毛症のリスクが低いこととも関連していました。また、この研究では、これらの関連形質において、思春期の開始時期が因果的役割を果たすことを示す統計的証拠も見つかりました。さらに、統合失調症と2種類の自己免疫疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)のリスクを高めるそれぞれの遺伝学的多様体間の関連が小さいことも発見されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


複数の形質に影響する遺伝学的多様体

 ヒトの疾患や形質の2種以上に影響する遺伝学的多様体について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、一見無関係な2つの形質(例えば片頭痛と冠動脈疾患)の基盤となる遺伝学的要因が一部重複している可能性が明らかになり、形質が他の形質に因果的影響を及ぼすと考えられる場合もいくつか同定された。

 全ゲノム関連解析を実施すると、1つの形質と統計的に関連する遺伝学的多様体とその形質をもたらす過程に関係している可能性のある遺伝学的多様体を同定できる。また、複数の形質に関連する多様体は、遺伝子の分子機能と複数の形質間の関係に関して手掛かりをもたらすことがある。しかし、これまでの複数の形質に関する研究の大部分は、関連のあることがすでに指摘されていた形質を対象としていた。

 今回、Joseph Pickrellたちは、大規模なデータセットが存在する形質や疾患(合計42種)の全ゲノム関連解析データを解析して、遺伝学的な重複を同定した。こうした形質や疾患には、計測的形質(例えば、身長、肥満度指数(BMI)、鼻の大きさ)、神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、感染症への感受性(例えば、小児耳感染症、小児扁桃摘出)が含まれている。その結果、少なくとも2つの形質と関連するゲノム変異部位が341か所判明した。例えば、少女の(思春期の開始を示す)初潮年齢が遅いことに関連する複数の多様体は、少年の声が低くなる年齢が遅いこと、BMIが低いこと、男女両方における身長の伸び、男性型脱毛症のリスクが低いこととも関連していた。また、今回の研究では、これらの関連形質において思春期の開始時期が因果的役割を果たすことを示す統計的証拠も見つかった。

 さらにPickrellたちは、統合失調症と2種類の自己免疫疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)のリスクを高めるそれぞれの遺伝学的多様体間の関連が小さいことも発見した。



参考文献:
Pickrell JK. et al.(2016): Detection and interpretation of shared genetic influences on 42 human traits. Nature Genetics, 48, 7, 709–717.
http://dx.doi.org/10.1038/ng.3570

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