長沼毅「ヒトの体と心のなりたちについて」
これは7月5日分の記事として掲載しておきます。『現代思想』2016年5月号の特集「人類の起源と進化─プレ・ヒューマンへの想像力」に掲載された論文です。本論文の基調は、人類の進化を生物進化の一部として把握していることで、視野の広さと奥行きの深さが窺えます。私は、勉強不足により、生物全体の進化は言うまでもなく、脊椎動物、さらには哺乳類や霊長類の進化についても明らかに知見が不足しているので、本論文は視野の狭い私にとってはたいへん有益でした。
本論文により改めて、人類の進化がそれまでの生物進化の積み重ねの延長線上にあることを思い知らされました。現代人のさまざまな特徴は過去の進化の延長線上にあるわけで、それが制約になっているとも言えますし、それ故に最初からいきなり作り上げようとしたら奇跡のような生物(これは人間に限らず、生物全般に言えるのでしょうが)が存在しているのだ、とも言えそうです。人間が四肢動物であることや有羊膜類であることなどは太古の進化の結果であり、人間の特徴を決定づけています。
これは、偶然的な変異(もちろん、定着するか否かは、単に偶然的な事情で決まるだけではなく、その時点での環境に左右される場合も多々あるわけですが)が人間の特徴を決めていることを意味しており、異なる進化もあり得たことを改めて思い知らされます。本論文は、指の本数(現代人ではほとんどの場合5本)が4本や2本だった場合、文化を変えたかもしれない、などといった思考実験により、一般読者層に馴染みやすそうな解説になるよう、工夫しています。恐竜が「知的」に進化した場合、哺乳を行なわないので、「愛のない知的生命体」になったかもしれない、との思考実験も興味深いものです。
参考文献:
長沼毅(2016)「ヒトの体と心のなりたちについて」『現代思想』第44巻10号P68-82(青土社)
本論文により改めて、人類の進化がそれまでの生物進化の積み重ねの延長線上にあることを思い知らされました。現代人のさまざまな特徴は過去の進化の延長線上にあるわけで、それが制約になっているとも言えますし、それ故に最初からいきなり作り上げようとしたら奇跡のような生物(これは人間に限らず、生物全般に言えるのでしょうが)が存在しているのだ、とも言えそうです。人間が四肢動物であることや有羊膜類であることなどは太古の進化の結果であり、人間の特徴を決定づけています。
これは、偶然的な変異(もちろん、定着するか否かは、単に偶然的な事情で決まるだけではなく、その時点での環境に左右される場合も多々あるわけですが)が人間の特徴を決めていることを意味しており、異なる進化もあり得たことを改めて思い知らされます。本論文は、指の本数(現代人ではほとんどの場合5本)が4本や2本だった場合、文化を変えたかもしれない、などといった思考実験により、一般読者層に馴染みやすそうな解説になるよう、工夫しています。恐竜が「知的」に進化した場合、哺乳を行なわないので、「愛のない知的生命体」になったかもしれない、との思考実験も興味深いものです。
参考文献:
長沼毅(2016)「ヒトの体と心のなりたちについて」『現代思想』第44巻10号P68-82(青土社)
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