超巨大火山の噴火の仕組み
これは7月22日分の記事として掲載しておきます。超巨大火山の噴火の仕組みに関する研究(Koulakov et al., 2016)が公表されました。スマトラ島のトバ湖は世界最大のカルデラ湖として知られています。74000年前頃のトバの大噴火は人類史上でも最大級の噴火であり、人類も含めて生物に大きな影響を及ぼしたのではないか、と考えられています。トバ大噴火により、初期現生人類(Homo sapiens)は大きな打撃を受け、遺伝的多様性を失ったのではないか、というわけです。しかし、この仮説には反論も提示されています(関連記事)。
この研究は、トバ大噴火のような大規模な噴火が起きる要因と、大量のマグマが生成される過程、および噴火周期がひじょうに長い理由について分析しています。この研究で明らかになったのは、トバ火山の地下150 km以上の地点に多層構造のマグマ供給系が存在していることです。深さ約150 kmの地点で、沈み込みプレートからガスと低二酸化ケイ素の塩基性メルトが生成され、このメルトが深さ約75 kmの地点まで上昇し、大規模な塩基性マグマ溜まりを形成する、というわけです。これと似たタイプのマグマ溜まりがイエローストーンでも発見されています。こうしたことから、全世界の超巨大火山の噴火周期が非常に長くなっている原因として、地殻の下にあるマグマ溜まりに高密度のマグマが滞留することが重要な制御因子となっている可能性が指摘されています。
さらに、マグマ溜まりに捕捉された揮発性物質によって生じた過度の圧力が限界値に達すると、マグマ溜まりからマグマが流出し、大量のマグマが地殻の間から上昇し始め、最終的には大規模な噴火になることも明らかにされています。トバ火山ではプレートの沈み込みが続いており、将来的には極めて大規模な噴火が起こる可能性があるものの、噴火が差し迫っていることを示唆する証拠はない、とこの研究は慎重な姿勢を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【地球科学】トバ火山下に隠されていた超巨大火山の秘密
超巨大火山(地球上で最も危険なタイプの火山)の噴火は、分厚い地殻の下にある大規模な高密度マグマ溜まりによって制御されており、噴火が起こるまでこのマグマ溜まりにマグマが貯蔵されるという考えを示した論文が、今週掲載される。この新知見は、インドネシアのトバ火山下のマグマ経路に関する新しい地震モデルによって導き出された。
現在はカルデラ湖として残っている超巨大火山のトバ火山が最後に噴火したのは今から74,000年前のことで、全球の気候と生物圏に壊滅的な影響を与えた。トバやイエローストーンなどの超巨大火山は影響が全球に及ぶような巨大噴火を引き起こす可能性があるが、(1)超巨大火山が大規模な噴火を起こす原因、(2)それほど大量のマグマが生成される過程、(3)噴火周期が非常に長い理由については、ほとんど解明が進んでいない。
今回、Ivan Koulakovたちは、地震データに基づく新しいモデルを発表した。このモデルは、トバ火山の地下150 km以上の地点に多層構造のマグマ供給系が存在していることを示している。深さ約150 kmの地点で、沈み込みプレートからガスと(低SiO2の)塩基性メルトが生成され、このメルトが深さ約75 kmの地点まで上昇し、大規模な塩基性マグマ溜まりを形成するのだ。Koulakovたちは、これと似たタイプのマグマ溜まりがイエローストーンでも発見されていることを指摘している。以上の新知見は、全世界の超巨大火山の噴火周期が非常に長くなっている原因として、地殻の下にあるマグマ溜まりに高密度のマグマが滞留することが重要な制御因子となっている可能性を示している。
さらに今回の研究で得られた知見は、マグマ溜まりに捕捉された揮発性物質によって生じた過度の圧力が限界値に達すると、マグマ溜まりからマグマが流出し、大量のマグマが地殻の間から上昇し始め、最終的には大規模な噴火になることを明らかにしている。トバ火山ではプレートの沈み込みが続いており、将来的には極めて大規模な噴火が起こる可能性があるが、噴火が差し迫っていることを示唆する証拠はない、とKoulakovたちは慎重な姿勢を示している。
参考文献:
Koulakov I. et al.(2016): The feeder system of the Toba supervolcano from the slab to the shallow reservoir. Nature Communications, 7, 12228.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms12228
この研究は、トバ大噴火のような大規模な噴火が起きる要因と、大量のマグマが生成される過程、および噴火周期がひじょうに長い理由について分析しています。この研究で明らかになったのは、トバ火山の地下150 km以上の地点に多層構造のマグマ供給系が存在していることです。深さ約150 kmの地点で、沈み込みプレートからガスと低二酸化ケイ素の塩基性メルトが生成され、このメルトが深さ約75 kmの地点まで上昇し、大規模な塩基性マグマ溜まりを形成する、というわけです。これと似たタイプのマグマ溜まりがイエローストーンでも発見されています。こうしたことから、全世界の超巨大火山の噴火周期が非常に長くなっている原因として、地殻の下にあるマグマ溜まりに高密度のマグマが滞留することが重要な制御因子となっている可能性が指摘されています。
さらに、マグマ溜まりに捕捉された揮発性物質によって生じた過度の圧力が限界値に達すると、マグマ溜まりからマグマが流出し、大量のマグマが地殻の間から上昇し始め、最終的には大規模な噴火になることも明らかにされています。トバ火山ではプレートの沈み込みが続いており、将来的には極めて大規模な噴火が起こる可能性があるものの、噴火が差し迫っていることを示唆する証拠はない、とこの研究は慎重な姿勢を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【地球科学】トバ火山下に隠されていた超巨大火山の秘密
超巨大火山(地球上で最も危険なタイプの火山)の噴火は、分厚い地殻の下にある大規模な高密度マグマ溜まりによって制御されており、噴火が起こるまでこのマグマ溜まりにマグマが貯蔵されるという考えを示した論文が、今週掲載される。この新知見は、インドネシアのトバ火山下のマグマ経路に関する新しい地震モデルによって導き出された。
現在はカルデラ湖として残っている超巨大火山のトバ火山が最後に噴火したのは今から74,000年前のことで、全球の気候と生物圏に壊滅的な影響を与えた。トバやイエローストーンなどの超巨大火山は影響が全球に及ぶような巨大噴火を引き起こす可能性があるが、(1)超巨大火山が大規模な噴火を起こす原因、(2)それほど大量のマグマが生成される過程、(3)噴火周期が非常に長い理由については、ほとんど解明が進んでいない。
今回、Ivan Koulakovたちは、地震データに基づく新しいモデルを発表した。このモデルは、トバ火山の地下150 km以上の地点に多層構造のマグマ供給系が存在していることを示している。深さ約150 kmの地点で、沈み込みプレートからガスと(低SiO2の)塩基性メルトが生成され、このメルトが深さ約75 kmの地点まで上昇し、大規模な塩基性マグマ溜まりを形成するのだ。Koulakovたちは、これと似たタイプのマグマ溜まりがイエローストーンでも発見されていることを指摘している。以上の新知見は、全世界の超巨大火山の噴火周期が非常に長くなっている原因として、地殻の下にあるマグマ溜まりに高密度のマグマが滞留することが重要な制御因子となっている可能性を示している。
さらに今回の研究で得られた知見は、マグマ溜まりに捕捉された揮発性物質によって生じた過度の圧力が限界値に達すると、マグマ溜まりからマグマが流出し、大量のマグマが地殻の間から上昇し始め、最終的には大規模な噴火になることを明らかにしている。トバ火山ではプレートの沈み込みが続いており、将来的には極めて大規模な噴火が起こる可能性があるが、噴火が差し迫っていることを示唆する証拠はない、とKoulakovたちは慎重な姿勢を示している。
参考文献:
Koulakov I. et al.(2016): The feeder system of the Toba supervolcano from the slab to the shallow reservoir. Nature Communications, 7, 12228.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms12228
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