顔面と頭部の毛髪に関連する遺伝子

 これは5月10日分の記事として掲載しておきます。顔面と頭部の毛髪に関連する遺伝子についての研究(Adhikari et al., 2016)が公表されました。現代人の顔面と頭部における毛髪の外観と分布は、同じ集団内と異なる集団間で有意差が認められますが、こうした差異の遺伝的基盤については、これまで解明があまり進んでいませんでした。この研究は、ヨーロッパ人とアメリカ先住民とアフリカ人の混血のラテンアメリカ人の全ゲノム関連解析を行ない、白髪など頭髪の特徴である形状と色、脱毛、顔面の毛髪の特徴である髭の濃さと眉毛の濃さ、眉毛叢生(両側の眉毛がくっついて生えている状態)の自然変動に影響を及ぼす10ヶ所の座位を同定しました。

 そのうちの一部は、毛髪の形状や髭の濃さなど2つ以上の毛髪の特徴に影響を及ぼすことが明らかになりましたが、顔面の毛髪の特徴に影響する座位の大部分は重複していないそうで、たとえば眉毛の形状と関連する座位は、脱毛といった他の毛髪の形質に影響を及ぼさないと考えられています。この研究には、白髪化と眉毛叢生、さらには眉毛および髭の濃さに関連する遺伝子についての初の記述もあります。この研究は、毛髪繊維の形状と成長範囲に影響を及ぼす機構に関する手掛かりになると期待されています。また、顔面の毛髪の多様性に関与する推定遺伝子と遺伝子産物を同定できれば、毛髪の成長を抑制または促進するための分子標的候補が明らかになる可能性もある、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝】一本眉やその他の顔面と頭部の毛髪の形質と関連する座位

 顔面と頭部の毛髪の分布と形状と色の違いに関係する座位が同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究結果は、ラテンアメリカ人を対象とした全ゲノム関連解析(GWAS)に基づいている。

 ヒトの顔面と頭部の毛髪の外観と分布は、同じ集団内と異なる集団間で有意差が認められるが、こうした差異の遺伝的基盤については、これまで解明があまり進んでいない。

 今回、Andres Ruiz-Linaresたちは、ヨーロッパ人とアメリカ先住民とアフリカ人の混血のラテンアメリカ人(6,000人以上)のGWASを行い、頭髪の特徴である形状と色(例えば白髪)、脱毛、そして顔面の毛髪の特徴である髭の濃さと眉毛の濃さ、眉毛叢生(両側の眉毛がくっついて生えている状態)の自然変動に影響を及ぼす10か所の座位を同定した。そのうちの一部は、2つ以上の毛髪の特徴(例えば、毛髪の形状と髭の濃さ)に影響を及ぼすことが明らかになったが、顔面の毛髪の特徴に影響する座位の大部分は重複していない。例えば、眉毛の形状と関連する座位は、他の毛髪の形質(例えば脱毛)に影響を及ぼさないと考えられている。今回の論文には、白髪化と眉毛叢生、それに眉毛と髭の濃さに関連する遺伝子に関する初めての記述もある。

 今回の研究結果は、毛髪繊維の形状と成長範囲に影響を及ぼす機構に関する手掛かりになると考えられている。また、顔面の毛髪の多様性に関与する推定遺伝子と遺伝子産物を同定できれば、毛髪の成長を抑制または促進するための分子標的候補が明らかになる可能性もある。



参考文献:
Adhikari K. et al.(2016): A genome-wide association scan in admixed Latin Americans identifies loci influencing facial and scalp hair features. Nature Communications, 7, 10815.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10815

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