エピジェネティック因子によるマウスの食餌性肥満の継承
これは4月29日分の記事として掲載しておきます。エピジェネティック因子によるマウスの食餌性肥満の継承に関する研究(Huypens et al., 2016)が公表されました。有性生殖の生物では、両親は仔に対して遺伝情報をDNAの形で伝えるだけでなく、一生の間に獲得した遺伝物質のエピジェネティックな修飾(DNA塩基配列を変化させずに遺伝子発現に影響を及ぼす可逆的な改変)を伝えることもあります。個体が肥満になるリスクがエピジェネティック因子を受け継ぐことで増加することは、疫学研究とモデル生物研究で示唆されています。しかし、こうしたエピジェネティック因子を受け継ぐ原因が、妊娠時または授乳時の母親の食餌、あるいは父親の精液または両親のマイクロバイオームに含まれる分子などといった環境条件なのかどうかは、明確ではありませんでした。
この研究は、遺伝学的に同一なマウスに対し、6週間にわたって高脂肪食・低脂肪食・通常食を与えました。高脂肪食を与えられたマウスは、予想通り肥満と耐糖能異常になりました。次にこの研究は、異なった食餌を与えられたマウスの精子と卵を組み合わせてさまざまな初期胚を作製し、健康な代理母に移植することで、精子や卵のみに存在するエピジェネティック因子から環境因子を排除し、生まれた仔が成体になったところで高脂肪食を与えました。すると、肥満の両親から生まれた仔は、両親の一方のみが肥満の場合よりも体重増が顕著でした。また、いずれの両親も肥満でない場合、高脂肪食による体重増が最も少ないことも示されました。これと類似したパターンは耐糖能異常についても見られ、配偶子に含まれるエピジェネティック因子が親から仔へ肥満と糖尿病のリスクが伝わる上で重要な役割を担っている、とこの研究は結論づけています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
マウスの食餌性肥満は非遺伝的に受け継がれる
マウスにおいて精子と卵(配偶子)を介して伝わるエピジェネティック因子によって肥満の両親から生まれた仔が食餌性肥満になりやすくなることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究は、環境の交絡作用を排除して、エピジェネティックな作用の直接的な役割を明らかにした。
両親は、仔に対して遺伝情報をDNAの形で伝えるだけでなく、一生の間に獲得した遺伝物質のエピジェネティックな修飾(DNA塩基配列を変化させずに遺伝子発現に影響を及ぼす可逆的な改変)を伝えることもある。個体が肥満になるリスクがエピジェネティック因子を受け継ぐことで増加することは、疫学研究とモデル生物研究で示唆されている。しかし、こうしたエピジェネティック因子を受け継ぐ原因が環境条件(例えば、1. 妊娠時または授乳時の母親の食餌、2. 父親の精液または両親のマイクロバイオームに含まれる分子)なのかどうかは断定されていない。
今回、Peter Huypens、Johannes Beckersたちの研究グループは、遺伝学的に同一なマウスに対し、6週間にわたって高脂肪食、低脂肪食または通常食を与えた。高脂肪食を与えられたマウスは、予想通り、肥満と耐糖能異常になった。次に、Huypensたちは、異なった食餌を与えられたマウスの精子と卵を組み合わせてさまざまな初期胚を作製し、健康な代理母に移植することで、精子や卵のみに存在するエピジェネティック因子から環境因子を排除した。そして生まれた仔が成体になったところで高脂肪食を与えた。肥満の両親から生まれた仔は、両親の一方のみが肥満の場合よりも体重増が顕著だった。また、いずれの両親も肥満でない場合が、高脂肪食による体重増が最も少なかった。これと類似したパターンが耐糖能異常についても見られ、Huypensたちは、配偶子に含まれるエピジェネティック因子が親から仔へ肥満と糖尿病のリスクが伝わる上で重要な役割を担っていると結論づけている。
参考文献:
Huypens P. et al.(2016): Epigenetic germline inheritance of diet-induced obesity and insulin resistance. Nature Genetics, 48, 5, 497–499.
http://dx.doi.org/10.1038/ng.3527
この研究は、遺伝学的に同一なマウスに対し、6週間にわたって高脂肪食・低脂肪食・通常食を与えました。高脂肪食を与えられたマウスは、予想通り肥満と耐糖能異常になりました。次にこの研究は、異なった食餌を与えられたマウスの精子と卵を組み合わせてさまざまな初期胚を作製し、健康な代理母に移植することで、精子や卵のみに存在するエピジェネティック因子から環境因子を排除し、生まれた仔が成体になったところで高脂肪食を与えました。すると、肥満の両親から生まれた仔は、両親の一方のみが肥満の場合よりも体重増が顕著でした。また、いずれの両親も肥満でない場合、高脂肪食による体重増が最も少ないことも示されました。これと類似したパターンは耐糖能異常についても見られ、配偶子に含まれるエピジェネティック因子が親から仔へ肥満と糖尿病のリスクが伝わる上で重要な役割を担っている、とこの研究は結論づけています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
マウスの食餌性肥満は非遺伝的に受け継がれる
マウスにおいて精子と卵(配偶子)を介して伝わるエピジェネティック因子によって肥満の両親から生まれた仔が食餌性肥満になりやすくなることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究は、環境の交絡作用を排除して、エピジェネティックな作用の直接的な役割を明らかにした。
両親は、仔に対して遺伝情報をDNAの形で伝えるだけでなく、一生の間に獲得した遺伝物質のエピジェネティックな修飾(DNA塩基配列を変化させずに遺伝子発現に影響を及ぼす可逆的な改変)を伝えることもある。個体が肥満になるリスクがエピジェネティック因子を受け継ぐことで増加することは、疫学研究とモデル生物研究で示唆されている。しかし、こうしたエピジェネティック因子を受け継ぐ原因が環境条件(例えば、1. 妊娠時または授乳時の母親の食餌、2. 父親の精液または両親のマイクロバイオームに含まれる分子)なのかどうかは断定されていない。
今回、Peter Huypens、Johannes Beckersたちの研究グループは、遺伝学的に同一なマウスに対し、6週間にわたって高脂肪食、低脂肪食または通常食を与えた。高脂肪食を与えられたマウスは、予想通り、肥満と耐糖能異常になった。次に、Huypensたちは、異なった食餌を与えられたマウスの精子と卵を組み合わせてさまざまな初期胚を作製し、健康な代理母に移植することで、精子や卵のみに存在するエピジェネティック因子から環境因子を排除した。そして生まれた仔が成体になったところで高脂肪食を与えた。肥満の両親から生まれた仔は、両親の一方のみが肥満の場合よりも体重増が顕著だった。また、いずれの両親も肥満でない場合が、高脂肪食による体重増が最も少なかった。これと類似したパターンが耐糖能異常についても見られ、Huypensたちは、配偶子に含まれるエピジェネティック因子が親から仔へ肥満と糖尿病のリスクが伝わる上で重要な役割を担っていると結論づけている。
参考文献:
Huypens P. et al.(2016): Epigenetic germline inheritance of diet-induced obesity and insulin resistance. Nature Genetics, 48, 5, 497–499.
http://dx.doi.org/10.1038/ng.3527
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