小泉龍人『都市の起源 古代の先進地域=西アジアを掘る』
これは4月28日分の記事として掲載しておきます。講談社選書メチエの一冊として、講談社より2016年3月に刊行されました。都市の起源の解明となると、まず問題となるのが都市の定義です。本書は都市の必要十分条件を「都市計画」・「行政機構」・「祭祀施設」と定義し、最初の都市は5300年前頃に成立したウルク(イラク南部)と(その直後にウルクの模倣都市として成立した)ハブーバ・カビーラ南(シリア)である、との見解を提示しています。5300年前頃のウルクよりも古いとされる、最初の都市候補としてよく名前の挙がるパレスチナのエリコ(イェリコ)などは、都市ではなく一般集落や都市的集落である、と本書は指摘します。一般集落から都市的集落を経て都市へといたる過程を、本書は都市化と呼んでいます。
都市化の要因は快適さの追求であり、塩害などにより困窮した人々が集落へと移住していき、異なる集団が共存していくなかで秩序化が進み、都市が成立した、というのが本書の見通しです。また本書は、都市化の過程で平等主義的だった社会が階層化していった、とも指摘しています。都市化の過程で、都市の主導権に関しては聖から俗へと転換していった、と把握していることも本書の特徴です。神殿を中心に神官団が都市を支配していた、との西アジアの初期都市国家像を見直す必要がある、というわけです。
都市と国家の関係について本書は、国家は都市社会の到達点として成立したのであり、国家なしに都市は存在し得るものの、都市の存在なしに国家は存在し得ない、との見解を提示しています。複数の都市が成立し、都市間の競合が激しくなっていったことで、本格的な権力を伴う国家(都市国家)が成立したのだ、というのが本書の見通しです。もっとも、これはあくまでも西アジアでの事例であり、たとえば隣接地域であるエジプトではまた様相が異なる、ということも本書は指摘しています。
本書は、エジプトや南アジアや日本についても言及しているものの、基本的には西アジアにおける都市の成立過程を論じています。率直に言って、本書の提示した都市の定義や都市化の要因・過程について、どこまで適用できるのか、疑問も残ります。その意味で、広く世界史・人類史における都市起源論というよりは、西アジアにおける都市の起源に関する一試論として読むべきでしょうか。アメリカ大陸や東アジアや地中海世界をも視野に入れた都市起源論であれば、本書とは異なる都市化の要因・成立過程が提示されるかもしれません。
都市化の要因は快適さの追求であり、塩害などにより困窮した人々が集落へと移住していき、異なる集団が共存していくなかで秩序化が進み、都市が成立した、というのが本書の見通しです。また本書は、都市化の過程で平等主義的だった社会が階層化していった、とも指摘しています。都市化の過程で、都市の主導権に関しては聖から俗へと転換していった、と把握していることも本書の特徴です。神殿を中心に神官団が都市を支配していた、との西アジアの初期都市国家像を見直す必要がある、というわけです。
都市と国家の関係について本書は、国家は都市社会の到達点として成立したのであり、国家なしに都市は存在し得るものの、都市の存在なしに国家は存在し得ない、との見解を提示しています。複数の都市が成立し、都市間の競合が激しくなっていったことで、本格的な権力を伴う国家(都市国家)が成立したのだ、というのが本書の見通しです。もっとも、これはあくまでも西アジアでの事例であり、たとえば隣接地域であるエジプトではまた様相が異なる、ということも本書は指摘しています。
本書は、エジプトや南アジアや日本についても言及しているものの、基本的には西アジアにおける都市の成立過程を論じています。率直に言って、本書の提示した都市の定義や都市化の要因・過程について、どこまで適用できるのか、疑問も残ります。その意味で、広く世界史・人類史における都市起源論というよりは、西アジアにおける都市の起源に関する一試論として読むべきでしょうか。アメリカ大陸や東アジアや地中海世界をも視野に入れた都市起源論であれば、本書とは異なる都市化の要因・成立過程が提示されるかもしれません。
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