田中史生『国際交易の古代列島』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2016年1月に刊行されました。本書は、紀元前の弥生時代から中世の始まる前までの、日本列島と他地域、さらには日本列島内における交易の変容を解説しています。本書は、この間の「国際交易」の変容を「国際情勢」や日本列島における政治体制の変容と関連づけて、上手く解説しているように思います。

 本書から窺えるのは、この間に日本列島とその周辺勢力の「国際交易」が変容していっているとはいえ、政治的枠組みが大きな意味を有していて、日本列島においては政治的指導者にとって「国際交易」が威信財獲得の重要手段であり、その権力基盤たり得たことは基本的に変わらない、ということです。そうした意味で、日本列島の政治権力は「公的」交易による統制を志向し続けました。本書が対象とする時代は基本的に、「国際交易」がおもに政治的指導者の威信財としての役割を担った時代と言えそうです。

 しかし、江南の経済発展などにより、「民間」商人が台頭していき、国家が厳密には掌握できていない交易も増加していきます。この延長線上に古代よりも拡大した中世や近世の交易があり、さらに多くの日本列島の住民に影響を与えるようになり、日本列島の社会をさらに大きく変えていったのではないか、と思います。本書を読んで改めて、日本列島の政治的指導者たちがユーラシア大陸東部の勢力に優れた技術を求めていたことが確認され、そうした点は率直に認めていかねばならないのだろう、と思います。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック