人類の歯の進化

 人類の歯の進化に関する研究(Evans et al., 2016)が公表されました。人類の進化史において、歯のサイズの縮小傾向が見られることは古くから認識されていました。この理由として、食餌の変化や調理技能の獲得など、さまざまな仮説が提示されてきましたが、この傾向の根底にある発生的基盤は不明でした。この研究は、過去700万年にわたる化石人類および大型類人猿の標本で歯のサイズを調べ、哺乳類の相対的な歯のサイズに影響を与える活性化因子–抑制因子機構である「抑制性カスケード」が、下顎の犬歯より後方の全ての第一生歯に関して、歯のサイズの標準パターンを形成することを明らかにしました。このモデルを用いることにより、人類の歯のサイズ比と絶対的サイズとの密接な関連性が明らかになりました。これにより、犬歯より後方の第一生歯では、1本の歯の位置とサイズから同じ歯列にある残り4本の歯のサイズを予測することができる、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:ヒト族の歯のサイズの進化と成長は単純な規則に支配されている

古生物学:ヒト族の歯のサイズの進化

 人類進化の特徴の1つに歯のサイズの全体的な縮小があることは、約80年前に認識されていた。これについては食餌の変化や調理技能の獲得など、さまざまな説明付けがなされてきたが、この傾向の根底にある発生的基盤は不明であった。今回A Evansたちは、過去700万年にわたる化石ヒト族および大型類人猿の標本で歯のサイズを調べ、哺乳類の相対的な歯のサイズに影響を与える活性化因子–抑制因子機構である「抑制性カスケード」が、下顎の犬歯より後方の全ての第一生歯に関して歯のサイズの標準パターンを形成することを見いだした。このモデルを用いることで、ヒト族の歯のサイズ比と絶対的サイズとの密接な関連性が明らかになった。これにより、犬歯より後方の第一生歯では、1本の歯の位置とサイズから同じ歯列にある残り4本の歯のサイズを予測することができる。



参考文献:
Evans AR. et al.(2016): A simple rule governs the evolution and development of hominin tooth size. Nature, 530, 7591, 477–480.
http://dx.doi.org/10.1038/nature16972

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