複雑な構造の目を使って捕食していた中期ジュラ紀の節足動物

 これは2月9日分の記事として掲載しておきます。複雑な構造の目を使って捕食していた中期ジュラ紀の節足動物に関する研究(Vannier et al., 2016)が公表されました。この研究は、フランス南東部で発掘された保存状態のきわめて良好な約1億6000万年前の海洋節足動物の一種(Dollocaris ingens)について報告しています。走査電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光法により、この節足動物の目とその他の内臓器官の構造が可視化されました。その結果、この節足動物には全身の長さの約1/4にあたる大きな目にそれぞれ約18000個の水晶体があり、トンボを除くほとんどの現生節足動物が持つ水晶体の数を上回っていることが明らかになりました。また、この節足動物の目の内部構造に現代の昆虫類および甲殻類と共通の特徴があることも明らかになりました。この節足動物は、その目・捕脚・胃の内容物から、比較的浅い海に生息する小型甲殻類を待ち伏せて捕食していた、と示唆されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【化石】極めて複雑な構造の目を使って捕食していた古代の節足動物

 今から1億6000万年前に生息していた海洋節足動物の一種(Dollocaris ingens)の高度に発達した目の構造について記述された論文が、今週掲載される。今回の研究成果は、D. ingensの生態学的特性と節足動物の視覚の進化史に関する手掛かりをもたらしている。

 目の内部構造はほとんど化石化しないため、古代の動物が自らの環境をどのように知覚できていたのかを示す直接証拠はなかなか見つからない。

 今回、Jean Vannierたちは、フランス南東部で発掘された保存状態の極めて良好なD. ingensの化石を調べ、走査電子顕微鏡法とエネルギー分散型X線分光法を用いて、目とその他の内臓器官の構造を可視化した。その結果、D. ingensの全身の長さの約4分の1にあたる大きな目にはそれぞれ約18,000個の水晶体があり、トンボを除くほとんどの現生節足動物が持つ水晶体の数を上回っていることが判明した。また、D. ingensの目の内部構造に現代の昆虫類と甲殻類と共通の特徴のあることも明らかになった。

 D. ingensの目、捕脚と胃の内容物のいずれも、D. ingensが比較的浅い海に生息する小型甲殻類を待ち伏せて捕食していたことを示唆している。



参考文献:
Vannier J. et al.(2016): Exceptional preservation of eye structure in arthropod visual predators from the Middle Jurassic. Nature Communications, 7, 10320.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10320

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