ゴリラの祖先候補の新たな年代
これは2月12日分の記事として掲載しておきます。ゴリラの祖先候補となる化石の新たな年代に関する研究(Katoh et al., 2016)が報道されました。2007年にエチオピアで発見された大型類人猿の化石は、チョローラピテクス=アビシニクス(Chororapithecus abyssinicus)と命名され、その年代は1050万~1000万年前と推定されました(関連記事)。アビシニクスは、その歯の形態的特徴からゴリラの祖先系統(もしくはゴリラの直接的祖先の近縁系統)と考えられています。
この研究は、新たな野外観察や地球化学・磁気層序学・放射性同位体のデータから、アビシニクスの発見されたエチオピアのチョローラ層(Chorora Formation)の推定年代を、じゅうらいの1050万年前頃から900万~700万年前頃へと繰り下げています。この時期の類人猿化石は乏しいため、アビシニクスはたいへん貴重だと言えるでしょう。アビシニクスの推定年代は800万年以上前、他のチョローラ層の化石の推定年代は850万年前~700万年前頃となります。
アビシニクスの推定年代は、ヒト・チンパンジー・ゴリラの分岐年代とそれが起きた場所の解明の手がかりとなります。この研究は、たとえばチンパンジーとヒトとの分岐年代を500万年前頃と推定した以前の見解よりも、変異率をもっと低く見積もった見解の方と合致しており、ヒト・チンパンジー・ゴリラの推定分岐年代はじゅうらいの見解よりもさかのぼるのではないか、との見解を提示しています。たとえば、ヒト・チンパンジーの共通祖先系統とゴリラの祖先系統との推定分岐年代は2000万~831万年前頃、ヒトの祖先系統とチンパンジーの祖先系統の推定分岐年代は1345万~678万年前頃とする見解も提示されています(関連記事)。
またこの研究は、アフリカ東部とユーラシアの動物相に関して、900万年前までにそれぞれ固有の特徴が強くなっていったのであり、ヒト・チンパンジー・ゴリラの分岐・進化はアフリカで起きたのだ、とする見解を改めて支持しています。たとえば、ケニアで発見された980万年前頃の類人猿化石(関連記事)であるナカリピテクス=ナカヤマイ(Nakalipithecus nakayamai)は、アビシニクスの祖先かもしれない、とこの研究は指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:ゴリラとヒトの系統分岐年代の新たな地質学的、古生物学的絞り込み
古生物学:初期のゴリラ系統に関する見直し
エチオピア・アファール地溝帯南縁部のチョローラ累層は、約1050万年前の化石を産すると考えられてきた。2007年に諏訪元(東京大学)たちは、チョローラ累層からゴリラの化石近縁種を発見したことを報告した。このチョローラピテクス・アビシニクス(Chororapithecus abyssinicus)は、層序年代から1050万~1000万年前のものと考えられ、またその特徴からゴリラのクレードの基部に位置する種と見なされた。諏訪たちは今回、新たな野外観察や、地球化学、地磁気層序学および放射性同位体のデータを示し、チョローラ累層の年代を約800万年前へと大幅に修正している。これによりチョローラピテクスの年代は、ユーラシアに類人猿が広く生息していた年代から、化石類人猿の証拠が乏しい年代へと引き上げられる。チョローラピテクスのゴリラ系統への帰属は、ヒト族およびチンパンジーにつながる系統とゴリラとの分岐年代の絞り込みに役立ち、また、この分岐がアフリカで起こったことを示唆するため、一層重要だと思われる。
参考文献:
Katoh S. et al.(2016): New geological and palaeontological age constraint for the gorilla–human lineage split. Nature, 530, 7589, 215–218.
http://dx.doi.org/10.1038/nature16510
この研究は、新たな野外観察や地球化学・磁気層序学・放射性同位体のデータから、アビシニクスの発見されたエチオピアのチョローラ層(Chorora Formation)の推定年代を、じゅうらいの1050万年前頃から900万~700万年前頃へと繰り下げています。この時期の類人猿化石は乏しいため、アビシニクスはたいへん貴重だと言えるでしょう。アビシニクスの推定年代は800万年以上前、他のチョローラ層の化石の推定年代は850万年前~700万年前頃となります。
アビシニクスの推定年代は、ヒト・チンパンジー・ゴリラの分岐年代とそれが起きた場所の解明の手がかりとなります。この研究は、たとえばチンパンジーとヒトとの分岐年代を500万年前頃と推定した以前の見解よりも、変異率をもっと低く見積もった見解の方と合致しており、ヒト・チンパンジー・ゴリラの推定分岐年代はじゅうらいの見解よりもさかのぼるのではないか、との見解を提示しています。たとえば、ヒト・チンパンジーの共通祖先系統とゴリラの祖先系統との推定分岐年代は2000万~831万年前頃、ヒトの祖先系統とチンパンジーの祖先系統の推定分岐年代は1345万~678万年前頃とする見解も提示されています(関連記事)。
またこの研究は、アフリカ東部とユーラシアの動物相に関して、900万年前までにそれぞれ固有の特徴が強くなっていったのであり、ヒト・チンパンジー・ゴリラの分岐・進化はアフリカで起きたのだ、とする見解を改めて支持しています。たとえば、ケニアで発見された980万年前頃の類人猿化石(関連記事)であるナカリピテクス=ナカヤマイ(Nakalipithecus nakayamai)は、アビシニクスの祖先かもしれない、とこの研究は指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:ゴリラとヒトの系統分岐年代の新たな地質学的、古生物学的絞り込み
古生物学:初期のゴリラ系統に関する見直し
エチオピア・アファール地溝帯南縁部のチョローラ累層は、約1050万年前の化石を産すると考えられてきた。2007年に諏訪元(東京大学)たちは、チョローラ累層からゴリラの化石近縁種を発見したことを報告した。このチョローラピテクス・アビシニクス(Chororapithecus abyssinicus)は、層序年代から1050万~1000万年前のものと考えられ、またその特徴からゴリラのクレードの基部に位置する種と見なされた。諏訪たちは今回、新たな野外観察や、地球化学、地磁気層序学および放射性同位体のデータを示し、チョローラ累層の年代を約800万年前へと大幅に修正している。これによりチョローラピテクスの年代は、ユーラシアに類人猿が広く生息していた年代から、化石類人猿の証拠が乏しい年代へと引き上げられる。チョローラピテクスのゴリラ系統への帰属は、ヒト族およびチンパンジーにつながる系統とゴリラとの分岐年代の絞り込みに役立ち、また、この分岐がアフリカで起こったことを示唆するため、一層重要だと思われる。
参考文献:
Katoh S. et al.(2016): New geological and palaeontological age constraint for the gorilla–human lineage split. Nature, 530, 7589, 215–218.
http://dx.doi.org/10.1038/nature16510
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