非アフリカ系現代人集団で増加する有害な遺伝的変異

 非アフリカ系現代人集団で有害な遺伝的変異が増加することを明らかにした研究(Henn et al., 2016)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。アフリカ起源の現生人類(Homo sapiens)の拡散は連続した創始者効果を伴うものだった、と考えられています。小集団では大集団よりも有害な遺伝的変異が効率的に除去されないため、非アフリカ系集団ではアフリカ系集団よりも有害な遺伝的変異が増加しているのはでないか、と集団遺伝学の理論では予測されています。

 この研究は、ナミビア・コンゴ・アルジェリア・パキスタン・カンボジア・シベリア・メキシコという世界の7地域の現代人のゲノムデータを用いて、有害な対立遺伝子頻度の地理的分布を提示しました。その結果、非アフリカ系においてアフリカ系よりも有害な対立遺伝子数が増加していることが明らかになりました。アフリカ系集団では、有害な遺伝的変異が過去に浄化選択を受けてきた強い証拠が見られる一方で、非アフリカ系集団ではそうした有害な遺伝的変異があたかも中立的であったかのように進化してきた、と指摘されています。

 またこの研究は、アフリカ系現代人集団と比較して、非アフリカ系現代人集団において有害な遺伝的変異が多い理由として、じゅうらいの研究が想定してきた単一のボトルネック(瓶首効果)では、遺伝的変異の頻度の地理的分布を説明するのに充分ではない、とも指摘しています。また、現代人の各地域集団間での有害な遺伝的変異の頻度の違いは、軽度のもので見られ、重度のものでは各地域集団間で類似した頻度が見られる、とも指摘されています。


参考文献:
Henn BM. et al.(20165): Distance from sub-Saharan Africa predicts mutational load in diverse human genomes. PNAS, 113, 4, E440–E449.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1510805112

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