タンジーア諸島における陸塊の喪失

 これは1月20日分の記事として掲載しておきます。タンジーア諸島における陸塊の喪失に関する研究(Schulte et al., 2015)が公表されました。アメリカ合衆国バージニア州チェサピーク湾にあるタンジーア諸島は、最も大きなタンジーア島をはじめとしていくつかの島々によって構成されており、18世紀にヨーロッパ人が入植しました。2013年時点でのタンジーア諸島の人口は727人です。この研究は、タンジーア諸島に関して、1850~2013年に作成された航空写真と座標参照系を使用した地図を解析し、1850年当時の陸塊のうち2013年まで残ったのはわずか33.25%にすぎないことを明らかにしました。その原因は、浸食と海水準上昇と推測されています。

 もし土地損失と海水準上昇がこれまでのペースで続けば、21世紀中に水没したり、22世紀初めに消失したりする島もあるかもしれない、と予測されています。また、タンジーア島のタンジーア町は2063年には居住に適さなくなる可能性が高い、とも予測されています。こうした予測は海水準上昇シナリオのうちでも控え目なものに基づいているので、これ以上に急激な海水準上昇が起これば、土地損失の速度も上がり、タンジーア町からの退去時期も早まる可能性がある、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【気候変動】タンジーア諸島の潮位上昇

 米国バージニア州チェサピーク湾にあるタンジーア諸島が、1850年以降に陸塊の大半を失ったことを報告する論文が掲載される。この研究では、海水準の上昇が現在のペースで進めば、タンジーア諸島が100年以内になくなり、島の住民は約50年後に島から退去せざるを得なくなることが示唆されている。

 タンジーア諸島は、最も大きなタンジーア島をはじめ、Goose島、Uppards島、Port Isobel島などいくつかの島々によって構成されており、1700年代にヨーロッパ人の入植者が住み着いた。2013年現在のタンジーア諸島の人口は727人となっている。

 今回、David Schulteたちは、タンジーア諸島に関して、1850~2013年に作成された航空写真と座標参照系を使用した地図を解析し、1850年当時の陸塊のわずか33.25%が2013年まで残ったことを明らかにした。その原因は、浸食と海水準上昇とされる。Schulteたちは、これらのデータに基づいて、タンジーア島嶼系の将来寿命を予測するためのモデルを構築した。もし土地損失と海水準上昇がこれまでのペースで続けば、Goose島は2038年に完全に水没し、Uppards島は2113年に消失するとSchulteたちは予測している。また、Schulteたちは、タンジーア島にあるタンジーア町が2063年には居住に適さなくなる可能性が高いという見方も示している。

 Schulteたちの予測は、海水準上昇シナリオのうちでも控え目なものに基づいている。しかし、これ以上に急激な海水準上昇が起これば、土地損失の速度も上がり、タンジーア町からの退去時期も早まる可能性があるとSchulteたちは述べている。



参考文献:
Schulte DM, Dridge KM, and Hudgins MH.(2015): Climate Change and the Evolution and Fate of the Tangier Islands of Chesapeake Bay, USA. Scientific Reports, 5, 17890.
http://dx.doi.org/10.1038/srep17890

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック