脊椎動物の神経堤の起源

 これは12月12日分の記事として掲載しておきます。脊椎動物の神経堤の起源に関する研究(Stolfi et al., 2015)が公表されました。脊椎動物を他と分かつ特徴の多くは、神経堤と呼ばれる胚組織に由来します。神経堤は発達中の神経板境界部に生じ、体内を遊走します。じゅうらい、尾索動物(被嚢類)や頭索動物など脊椎動物に最も近い無脊椎動物に、神経堤に相当する痕跡は知られていませんでした。しかし最近になって、脊椎動物特有の神経堤関連遺伝子と同系の遺伝子が神経板縁細胞で発現しているという証拠が見つかっています。

 この研究は、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)の「オタマジャクシ形」幼生にある神経性細胞が、脊椎動物で神経堤に由来する脊髄神経節ニューロンといくつかの性質を共有することを示しました。この細胞の前駆体は尾側の神経板縁細胞から派生し、層から離れて神経管の両側に沿って方向性のある遊走をした後、軸索に分化します。このことから、遊走という脊椎動物の神経堤細胞に特有と考えられていた性質の進化的起源は、じゅうらいの見解よりも古いことが示唆されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化学:遊走性のニューロン前駆細胞は尾索動物の神経板境界部から生じる

進化学:脊椎動物の神経堤の起源はもっと古い

 脊椎動物を他と分かつ特徴の多くは、神経堤と呼ばれる胚組織に由来するが、神経堤は発達中の神経板境界部に生じて、体内を遊走する。この特徴的な胚組織は、どのようにして出現したのだろうか。最近まで、尾索動物(被嚢類)や頭索動物など脊椎動物に最も近い無脊椎動物に、神経堤に相当する痕跡は知られていなかった。しかし、脊椎動物特有の神経堤関連遺伝子と同系の遺伝子が神経板縁細胞で発現しているという証拠が見つかっている。今回、L Christiaenたちは、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)の「オタマジャクシ形」幼生にある神経性細胞が、脊椎動物で神経堤に由来する脊髄神経節ニューロンといくつかの性質を共有することを示し、この研究を一歩先に進めた。この細胞の前駆体は、尾側の神経板縁細胞から派生し、層から離れて神経管の両側に沿って方向性のある遊走をした後、軸索に分化する。このことから、遊走という、これまで脊椎動物の神経堤細胞に特有と考えられていた性質の進化的起源はこれまで考えられていたよりも古いことが示唆された。



参考文献:
Stolfi A. et al.(2015): Migratory neuronal progenitors arise from the neural plate borders in tunicates. Nature, 527, 7578, 371–374.
http://dx.doi.org/10.1038/nature15758

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