ボノボの起源

 これは11月6日分の記事として掲載しておきます。ボノボ(Pan paniscus)の起源に関する研究(Takemoto et al., 2015)が報道されました。解説記事も公開されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。現在、チンパンジー(Pan troglodytes)はコンゴ川の北側に、ボノボはコンゴ川の南側に生息しています。ボノボとチンパンジーの分岐年代は、遺伝学的研究では210万~80万年前頃と推定されています。じゅうらい、コンゴ川の形成年代もその頃と推定されており、そのためにボノボとチンパンジーの共通祖先は分断され、ボノボとチンパンジーに分岐していった、と考えられていました。

 しかし、近年の海底油田探査および海洋底掘削計画による海洋底堆積物の報告や、大陸の地質および地球物理学的探査の報告から、コンゴ川の形成は新しく見積もっても3400万年前頃と推定されるようになりました。そのためこの研究は、ボノボとチンパンジーの共通祖先の一部集団が、180万もしくは100万年前頃のひじょうに乾燥した期間に水量の低下したコンゴ川の浅瀬を渡ってコンゴ川の南側に達し、ボノボに進化したのではないか、との見解を提示しています。この年代は、上述したボノボとチンパンジーの推定分岐年代と合致します。

 子作りに関係のないニセ発情と性行動の社会的利用、オスと同等以上の高いメスの地位、平和的な集団間・集団内の関係など、ボノボはチンパンジーと異なる特徴を有していますが、これらはボトルネック(瓶首)効果として説明できるのではないか、というのがこの研究の見解です。さらにこの研究は、人類の起源地がサヘル~東アフリカ一帯とする考え方を支持することになる、とも指摘しています。現在、野生ボノボの遺伝情報とコンゴ盆地の古環境から、移入した後のボノボ集団がどのようにコンゴ盆地南側に分布域を広げていったのか、解析中とのことで、今後の研究の進展が大いに期待されます。


参考文献:
Takemoto H, Kawamoto Y, and Furuichi T.(2015): How did bonobos come to range south of the congo river? Reconsideration of the divergence of Pan paniscus from other Pan populations. Evolutionary Anthropology, 24, 5, 170-184.
http://dx.doi.org/10.1002/evan.21456

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