閉経年齢に関連する遺伝子多様体

 女性の閉経年齢に関連する遺伝子多様体についての研究(Day et al., 2015)が公表されました。40歳までに閉経を迎える女性については、乳がんを発症する確率が低いものの、他の合併症(骨粗鬆症・心血管疾患・2型糖尿病など)を発症する確率が高いと考えられています。自然閉経の年齢が決まるさいには遺伝的要因が役割を果たしていますが、それと関連する遺伝子の全容も他の疾患の発症危険性にたいする遺伝的要因の寄与も、これまでじゅうぶんには解明されていませんでした。

 この研究は、約70000人のヨーロッパ系女性を対象とした全ゲノム関連解析を実施し、自然閉経年齢に関連する56個の遺伝子多様体を同定しましたが、そのうちの18個はすでに報告されていました。これらの遺伝子多様体は、損傷を受けたDNAの修復に関与する遺伝子および原発性卵巣機能不全と思春期遅発症に関連する遺伝子に多く存在していました。この解析結果は、女性の生殖寿命の始まりと終わりの間に分子的つながりがある可能性を示唆している、と指摘されています。また、遅発閉経をもたらす遺伝子多様体が乳癌の危険性を高めることを示す証拠も得られました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


閉経年齢に関連する遺伝子バリアント

 女性の自然閉経年齢に関連する遺伝子バリアントについての報告が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、閉経年齢に影響する遺伝子バリアントと思春期年齢に影響する遺伝子バリアントが関連していることが明らかになり、遅発閉経と乳がんリスクが関連しているという過去の研究結果が確認された。

 40歳までに閉経を迎える女性は、乳がんを発症する確率が低いが、他の合併症(例えば、骨粗鬆症、心血管疾患、2型糖尿病)を発症する確率が高いと考えられている。自然閉経(非外科的閉経)の年齢が決まる際には遺伝的要因が役割を果たしているが、それに関係する遺伝子の全容も他の疾患の発症リスクに対する遺伝的要因の寄与も解明されていない。

 今回、John Perryたちは、約70,000人のヨーロッパ系女性を対象とした全ゲノム関連解析を実施して、自然閉経年齢に関連する56個の遺伝子バリアントを同定した。そのうちの18個は過去の研究報告によってすでに知られている。これらの遺伝子バリアントは、損傷を受けたDNAの修復に関与する遺伝子と原発性卵巣機能不全と思春期遅発症に関連する遺伝子に多く存在していた。この解析結果は、女性の生殖寿命の始まりと終わりの間に分子的つながりがある可能性を示唆している。また、今回の研究では、遅発閉経をもたらす遺伝子バリアントが乳がんリスクを高めることを示す証拠も得られた。



参考文献:
Day FR. et al.(2015): Large-scale genomic analyses link reproductive aging to hypothalamic signaling, breast cancer susceptibility and BRCA1-mediated DNA repair. Nature Genetics, 47, 11, 1294–1303.
http://dx.doi.org/10.1038/ng.3412

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