さかのぼる南アメリカ大陸における人類の痕跡
これは11月22日分の記事として掲載しておきます。南アメリカ大陸における人類の痕跡についての研究(Dillehay et al., 2015)が公表されました。アメリカ大陸への人類最初の移住については、20世紀後半~近年までクローヴィス(Clovis)文化の担い手が最初の移住者だとするクローヴィス最古説が主流でした。しかし近年になって、アメリカ大陸におけるクローヴィス文化以前の人類の痕跡が相次いで報告されていることから、クローヴィス最古説を否定する研究者が増えつつあり、クローヴィス最古説はもはや否定された過去の仮説と言ってよいでしょう。しかし、だからといってこの問題に関して新たな共通認識が形成されたとも言い難い状況であり、その年代や拡散の速度・経路などをめぐって、議論が続いています。
クローヴィス最古説が否定されるうえで重要な役割を果たしたのが、チリのモンテヴェルデ(Monte Verde)遺跡です。本論文は、モンテヴェルデ遺跡とその近くにあるチンチフアピ(Chinchihuapi)遺跡の石器・動物の遺骸・焼けた痕跡などから、新たな年代を提示しています。その結果本論文は、モンテヴェルデ地域には、固く見積もっても較正年代で18500~14500年前の間に人類が存在していた、との結論を提示しています。また本論文は、古植生の調査から当時の気候変動も検証しており、この時期のモンテヴェルデ地域には亜寒帯に適応した小集団が進出していたのではないか、と推測しています。
石器の分析からは、石材の1/3以上が外来産であるため、人間の移動もしくは長距離交換が高頻度に行なわれていたのではないか、と本論文は指摘しています。本論文は、氷結していないアンデス地域を経由して、18500~14500年前には太平洋沿岸地域とアルゼンチン草原の間で人類の移動・交流があったのだろう、と推測しています。当時の南アメリカ大陸の人口は希薄だったのでしょうが、人類の行動は当時から活発だったようです。本論文は、クローヴィス最古説を改めて否定するとともに、南アメリカ大陸における人類の確実な痕跡がさらにさかのぼることを示しました。ただ、本論文で指摘されているように、この推定年代は今後さらに変わっていく可能性があるので、研究の進展が期待されます。
参考文献:
Dillehay TD, Ocampo C, Saavedra J, Sawakuchi AO, Vega RM, Pino M, et al. (2015) New Archaeological Evidence for an Early Human Presence at Monte Verde, Chile. PLoS ONE 10(11): e0141923
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0141923
クローヴィス最古説が否定されるうえで重要な役割を果たしたのが、チリのモンテヴェルデ(Monte Verde)遺跡です。本論文は、モンテヴェルデ遺跡とその近くにあるチンチフアピ(Chinchihuapi)遺跡の石器・動物の遺骸・焼けた痕跡などから、新たな年代を提示しています。その結果本論文は、モンテヴェルデ地域には、固く見積もっても較正年代で18500~14500年前の間に人類が存在していた、との結論を提示しています。また本論文は、古植生の調査から当時の気候変動も検証しており、この時期のモンテヴェルデ地域には亜寒帯に適応した小集団が進出していたのではないか、と推測しています。
石器の分析からは、石材の1/3以上が外来産であるため、人間の移動もしくは長距離交換が高頻度に行なわれていたのではないか、と本論文は指摘しています。本論文は、氷結していないアンデス地域を経由して、18500~14500年前には太平洋沿岸地域とアルゼンチン草原の間で人類の移動・交流があったのだろう、と推測しています。当時の南アメリカ大陸の人口は希薄だったのでしょうが、人類の行動は当時から活発だったようです。本論文は、クローヴィス最古説を改めて否定するとともに、南アメリカ大陸における人類の確実な痕跡がさらにさかのぼることを示しました。ただ、本論文で指摘されているように、この推定年代は今後さらに変わっていく可能性があるので、研究の進展が期待されます。
参考文献:
Dillehay TD, Ocampo C, Saavedra J, Sawakuchi AO, Vega RM, Pino M, et al. (2015) New Archaeological Evidence for an Early Human Presence at Monte Verde, Chile. PLoS ONE 10(11): e0141923
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0141923
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