『ナショナルジオグラフィック』2015年10月号「眠りから覚めた謎の人類」
南アフリカ共和国のライジングスター洞窟(Rising Star Cave)にあるディナレディ空洞(Dinaledi Chamber)で発見された人骨群についての特集です。この人骨群はホモ属の新種ナレディ(Homo naledi)と命名され、大きく報道されました(関連記事)。本特集では、ナレディについてそれらの報道よりも詳しく取り上げられています。とくに、ナレディ発見の経緯はかなり詳しく解説されています。『ナショナルジオグラフィック』らしい美麗な写真も魅力で、洞窟や復元像には迫力があります。
本特集でも改めて指摘されていますが、ナレディには祖先的特徴と派生的特徴とが混在しています。肩や指が祖先的な一方で、手首や足はかなり現代的です。大臼歯の歯冠が小さく、歯冠上部の突起である咬頭が5個ある点は現代人的ですが、小臼歯の歯根は祖先的です。脳容量は男性で560㎤と推定されており、ホモ属の基準を大きく下回っているにも関わらず、頭骨はホモ属的です。ホモ属のエレクトス(Homo erectus)よりも現代人に近い特徴とアウストラロピテクス属よりも類人猿に近い特徴とが混在していることをどう評価すべきなのか、今後議論が続きそうです。
この議論である程度見通しを立てるためには、ナレディの年代を絞り込む必要があります。しかし、すでに報道されているように、ナレディの年代はまだ絞り込まれていません。ナレディを発見・分析した研究者たちは、アウストラロピテクス属からホモ属への進化過程にある種としてナレディを把握しています。この特集でも、ナレディの年代について、300万~200万年前頃、つまりアウストラロピテクス属~ホモ属への進化過程とする見解が提示されていますが、一方で、100万年前頃以降である可能性まで想定されています。
ナレディにはあまりにも現代人的な特徴が見られることから、100万年前以降の人類という可能性も無視できないように思われます。祖先的と考えられる特徴は、何らかの理由で小型化したさいに形成された派生的なものではないか、というわけです。ホモ属とされるフロレシエンシス(Homo floresiensis)は更新世後期~末期における存在が確認されており(それ以前から存在したのでしょうが)、ホモ属的特徴と祖先的特徴の混在する脳の小さな人類という点で、ナレディとの共通点が認められます。そのことから考えて、ナレディの年代が10万年前頃である可能性さえ現時点では無視できないように思います。まあ、ナレディの年代がいつなのかはさておくとしても、本特集も指摘するように、ナレディにより人類の進化の複雑さが改めて示されたことは確かでしょう。
ナレディに関して、その進化系統樹における位置づけとともに今後重要な論点となりそうなのが、人骨群の堆積状況と洞窟の構造から、ナレディの死体は意図的に運ばれ、それも明かりを用いるなど複雑なものだった、とするナレディの分析に直接関わった研究者たちの見解です。ナレディは埋葬またはその萌芽的なことを行なっていたのではないか、というわけです。しかし、ナレディの分析に直接関わっていない研究者からは、当時は別の入り口があり、容易に人類が入れたのではないか、との見解も提示されています。ナレディの認知能力に関しては、その考古学的文脈が不明なのが議論を難しくしており、ナレディの所産と確認される石器が発見されることを期待しています。ナレディはたいへん興味深い人類であり、今後の研究の進展が大いに期待されます。
本特集でも改めて指摘されていますが、ナレディには祖先的特徴と派生的特徴とが混在しています。肩や指が祖先的な一方で、手首や足はかなり現代的です。大臼歯の歯冠が小さく、歯冠上部の突起である咬頭が5個ある点は現代人的ですが、小臼歯の歯根は祖先的です。脳容量は男性で560㎤と推定されており、ホモ属の基準を大きく下回っているにも関わらず、頭骨はホモ属的です。ホモ属のエレクトス(Homo erectus)よりも現代人に近い特徴とアウストラロピテクス属よりも類人猿に近い特徴とが混在していることをどう評価すべきなのか、今後議論が続きそうです。
この議論である程度見通しを立てるためには、ナレディの年代を絞り込む必要があります。しかし、すでに報道されているように、ナレディの年代はまだ絞り込まれていません。ナレディを発見・分析した研究者たちは、アウストラロピテクス属からホモ属への進化過程にある種としてナレディを把握しています。この特集でも、ナレディの年代について、300万~200万年前頃、つまりアウストラロピテクス属~ホモ属への進化過程とする見解が提示されていますが、一方で、100万年前頃以降である可能性まで想定されています。
ナレディにはあまりにも現代人的な特徴が見られることから、100万年前以降の人類という可能性も無視できないように思われます。祖先的と考えられる特徴は、何らかの理由で小型化したさいに形成された派生的なものではないか、というわけです。ホモ属とされるフロレシエンシス(Homo floresiensis)は更新世後期~末期における存在が確認されており(それ以前から存在したのでしょうが)、ホモ属的特徴と祖先的特徴の混在する脳の小さな人類という点で、ナレディとの共通点が認められます。そのことから考えて、ナレディの年代が10万年前頃である可能性さえ現時点では無視できないように思います。まあ、ナレディの年代がいつなのかはさておくとしても、本特集も指摘するように、ナレディにより人類の進化の複雑さが改めて示されたことは確かでしょう。
ナレディに関して、その進化系統樹における位置づけとともに今後重要な論点となりそうなのが、人骨群の堆積状況と洞窟の構造から、ナレディの死体は意図的に運ばれ、それも明かりを用いるなど複雑なものだった、とするナレディの分析に直接関わった研究者たちの見解です。ナレディは埋葬またはその萌芽的なことを行なっていたのではないか、というわけです。しかし、ナレディの分析に直接関わっていない研究者からは、当時は別の入り口があり、容易に人類が入れたのではないか、との見解も提示されています。ナレディの認知能力に関しては、その考古学的文脈が不明なのが議論を難しくしており、ナレディの所産と確認される石器が発見されることを期待しています。ナレディはたいへん興味深い人類であり、今後の研究の進展が大いに期待されます。
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