母親の身体的状態と仔の性比
母親の身体的状態と仔の性比についての研究(Schindler et al., 2015)が公表されました。身体的状態の良好な母親は雄の仔を多く産む傾向があり、状態の不良な母親は雌の仔を多く産む傾向がある、との見解が1973年に提示されましたが、その後に実証の裏づけはほとんど得られていませんでした。この研究は、その見解の根拠となった一夫多妻制で性的二型性を示す種では、一般的に雌よりも雄の方が死亡率が高く、それが従来の研究で考慮されていなかったのではないか、と指摘しています。この研究は、死亡率・年齢特異的な生殖・生活史戦略に見られる両性間の差異を組み込み検証した結果、母親の状態と仔の性比との相関だけでは、母親が仔の性比を適応的に調整すると結論づけるのに不充分であることを示しました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
進化論:性特異的個体群統計学とトリヴァーズ–ウィラードの理論の一般化
進化論:母親の状態と仔の性比
1973年、トリヴァーズとウィラードは生活史戦略に関する重要な論文を発表し、その中で、身体的状態の良好な母親は雄の仔を多く産む傾向があり、状態の不良な母親は雌の仔を多く産む傾向があると予測した。この理論はさまざまに拡張されて練り上げられてきたが、実証研究による裏付けはまだほとんど得られていない。その理由について、今回S Schindlerたちは、この理論を展開する対象となった一夫多妻制で性的二型性を示す種では、一般的に雌よりも雄の方が死亡率が高く、それが従来の研究で考慮されていなかったためではないかとしている。著者たちは元の理論を拡張して、死亡率、年齢特異的な生殖、および生活史戦略に見られる両性間の差異を組み込み、母親の状態と仔の性比との相関だけでは、母親が仔の性比を適応的に調整すると結論付けるのに不十分であることを示した。
参考文献:
Schindler S. et al.(2015): Sex‐specific demography and generalization of the Trivers–Willard theory. Nature, 526, 7572, 249–252.
http://dx.doi.org/10.1038/nature14968
進化論:性特異的個体群統計学とトリヴァーズ–ウィラードの理論の一般化
進化論:母親の状態と仔の性比
1973年、トリヴァーズとウィラードは生活史戦略に関する重要な論文を発表し、その中で、身体的状態の良好な母親は雄の仔を多く産む傾向があり、状態の不良な母親は雌の仔を多く産む傾向があると予測した。この理論はさまざまに拡張されて練り上げられてきたが、実証研究による裏付けはまだほとんど得られていない。その理由について、今回S Schindlerたちは、この理論を展開する対象となった一夫多妻制で性的二型性を示す種では、一般的に雌よりも雄の方が死亡率が高く、それが従来の研究で考慮されていなかったためではないかとしている。著者たちは元の理論を拡張して、死亡率、年齢特異的な生殖、および生活史戦略に見られる両性間の差異を組み込み、母親の状態と仔の性比との相関だけでは、母親が仔の性比を適応的に調整すると結論付けるのに不十分であることを示した。
参考文献:
Schindler S. et al.(2015): Sex‐specific demography and generalization of the Trivers–Willard theory. Nature, 526, 7572, 249–252.
http://dx.doi.org/10.1038/nature14968
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