古代エチオピア人のゲノム解析
古代エチオピア人のゲノム解析についての研究(Llorente et al., 2015)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、エチオピア高地のモタ(Mota)と呼ばれる洞窟で発見された4500年前頃の男性のゲノムの解析に成功しました。この男性はうつ伏せで埋葬されていたそうです。アフリカにおける古代ゲノムの解析としては最初の成功例となり、高地のため涼しく乾燥した気候だったことが幸いしたようです。
4500年前頃のモタ人のゲノムは、現代のアフリカ人とも比較されました。その結果、じゅうらいより想定されていた、3000年前頃のユーラシア西部からアフリカへの人間の移住(ユーラシアに進出したアフリカ起源の人間がアフリカに進出したということで、「逆流」と呼ばれています)の規模が、じゅうらいの推定よりも大規模で広範なものだったのではないか、との見解が提示されています。西ユーラシアからアフリカへと「逆流」した集団は、小麦や大麦のような西アジアの穀物がアフリカ東部にもたらされていることから、新石器時代農耕民と密接に関連する集団だろう、と推測されています。
西ユーラシアからアフリカへの「逆流」は、「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ東部から始まったと考えられています。3000年前頃の「逆流」により、現代のアフリカ東部集団の遺伝子プールの25%ほどは西ユーラシア集団に由来するのではないか、と推測されました。さらに、アフリカ東部だけではなく、アフリカ西部・中央部・南部の現代人集団にも、この「逆流」の遺伝的影響が及んでいることが明らかになりました。比較的交雑が少なかったと以前には考えられていた、ヨルバ(Yoruba)やムブティ(Mbuti)のような集団も、その遺伝子プールの6~7%は「逆流」してきたユーラシア人に由来する、と推定されています。
このような「逆流」の要因はまだよく分かっていないようです。この年代に、移住を促進するような気候的変動はまだ確認されていません。上述したように、西アジアからアフリカへの農耕民の移住が示唆されていますから、西アジアにおける人口の増大が「逆流」の要因なのかもしれません。西ユーラシア人のゲノムがアフリカ東部だけではなく全域に拡散したことについては、バンツー語族の拡大が大きな役割を果たしたのではないか、と推測されています。人類の移住史は単純なものではなく、複雑なものであることが、この研究により改めて確認されたと言えるでしょう。
参考文献:
Llorente MG. et al.(2015): Ancient Ethiopian genome reveals extensive Eurasian admixture throughout the African continent. Science, 350, 6262, 820-822.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aad2879
4500年前頃のモタ人のゲノムは、現代のアフリカ人とも比較されました。その結果、じゅうらいより想定されていた、3000年前頃のユーラシア西部からアフリカへの人間の移住(ユーラシアに進出したアフリカ起源の人間がアフリカに進出したということで、「逆流」と呼ばれています)の規模が、じゅうらいの推定よりも大規模で広範なものだったのではないか、との見解が提示されています。西ユーラシアからアフリカへと「逆流」した集団は、小麦や大麦のような西アジアの穀物がアフリカ東部にもたらされていることから、新石器時代農耕民と密接に関連する集団だろう、と推測されています。
西ユーラシアからアフリカへの「逆流」は、「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ東部から始まったと考えられています。3000年前頃の「逆流」により、現代のアフリカ東部集団の遺伝子プールの25%ほどは西ユーラシア集団に由来するのではないか、と推測されました。さらに、アフリカ東部だけではなく、アフリカ西部・中央部・南部の現代人集団にも、この「逆流」の遺伝的影響が及んでいることが明らかになりました。比較的交雑が少なかったと以前には考えられていた、ヨルバ(Yoruba)やムブティ(Mbuti)のような集団も、その遺伝子プールの6~7%は「逆流」してきたユーラシア人に由来する、と推定されています。
このような「逆流」の要因はまだよく分かっていないようです。この年代に、移住を促進するような気候的変動はまだ確認されていません。上述したように、西アジアからアフリカへの農耕民の移住が示唆されていますから、西アジアにおける人口の増大が「逆流」の要因なのかもしれません。西ユーラシア人のゲノムがアフリカ東部だけではなく全域に拡散したことについては、バンツー語族の拡大が大きな役割を果たしたのではないか、と推測されています。人類の移住史は単純なものではなく、複雑なものであることが、この研究により改めて確認されたと言えるでしょう。
参考文献:
Llorente MG. et al.(2015): Ancient Ethiopian genome reveals extensive Eurasian admixture throughout the African continent. Science, 350, 6262, 820-822.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aad2879
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