奇形のプランクトンから見えてくる大量絶滅の要因
奇形のプランクトンと大量絶滅の関係についての研究(Vandenbroucke et al., 2015)が報道されました。4億2000万年以上前のオルドビス紀-シルル紀の大量絶滅は間欠的に起こり、当時は、大部分の生物が海の中で繁殖し、陸上で生き延びた生物はわずかだった、とされています。これまでの研究で示されたモデルでは、この大量絶滅の原因は気候の寒冷化と生息地の減少だと示唆されていましたが、こうしたモデルでは、古生物学的観察結果と地球化学的観測結果を説明できない、と指摘されています。
この研究は、シルル紀後期の絶滅事象の開始時に起こったプランクトンの奇形の発生過程が、高濃度の金属毒素に対する現代の生物の応答に非常によく似ていることを明らかにしました。奇形のあるプランクトンの発生とその化石が保存された岩石の金属含有量の急増は同時に起こっていたので、金属中毒も古代のプランクトンの奇形の原因だった可能性がある、と推測されています。高い金属含有量は、海洋の化学組成が変化し、酸素欠乏の拡大が生物の死滅をもたらすメカニズムとなり、初期の絶滅に寄与したことを示唆しています。また、これは4億年以上前の話というだけではなく、現在の海にも類似点がある、とも指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【地球科学】大量絶滅の前触れ
奇形のあるプランクトンが大量絶滅の新たな要因を示唆している可能性を裏付ける証拠を示した論文が、今週掲載される。最古のいくつかの大規模な大量絶滅は氷河作用と関連していることがすでに明らかになっているが、この論文によれば、海洋の酸素欠乏の拡大と有害な金属が大量絶滅の原因である可能性の方が高いとされる。
今から4億2000万年以上前のオルドビス紀-シルル紀の大量絶滅事象は間欠的に起こり、当時は、大部分の生物が海の中で繁殖し、陸上で生き延びた生物はわずかだった。これまでの研究で示されたモデルでは、この大量絶滅事象の原因が気候の寒冷化と生息地の減少であることが示唆されていたが、こうしたモデルは、古生物学的観察結果と地球化学的観測結果を説明できない。
今回、Thijs Vandenbrouckeたちは、シルル紀後期の絶滅事象の開始時に起こったプランクトンの奇形の発生過程が、高濃度の金属毒素に対する現代の生物の応答に非常によく似ていることを明らかにした。Vandenbrouckeたちは、奇形のあるプランクトンの発生とその化石が保存された岩石の金属含有量の急増が同時に起こっていたことから、金属中毒も古代のプランクトンの奇形の原因だった可能性があると考えている。金属含有量が高いということは、海洋の化学組成が変化し、酸素欠乏の拡大が生物の死滅をもたらすメカニズムとなって、この初期絶滅事象に寄与したことを示唆している。
海洋の酸素欠乏が大量絶滅の背後にある駆動力だとする研究報告が最近になって発表されており、そのことは今回の研究によっても裏付けられている。また、奇形のある化石プランクトンが酸素欠乏期の開始時を明らかにするための新たな法医学ツールとなる可能性も示唆されている。
参考文献:
Vandenbroucke TRA. et al.(2015): Metal-induced malformations in early Palaeozoic plankton are harbingers of mass extinction. Nature Communications, 6, 7966.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms8966
この研究は、シルル紀後期の絶滅事象の開始時に起こったプランクトンの奇形の発生過程が、高濃度の金属毒素に対する現代の生物の応答に非常によく似ていることを明らかにしました。奇形のあるプランクトンの発生とその化石が保存された岩石の金属含有量の急増は同時に起こっていたので、金属中毒も古代のプランクトンの奇形の原因だった可能性がある、と推測されています。高い金属含有量は、海洋の化学組成が変化し、酸素欠乏の拡大が生物の死滅をもたらすメカニズムとなり、初期の絶滅に寄与したことを示唆しています。また、これは4億年以上前の話というだけではなく、現在の海にも類似点がある、とも指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【地球科学】大量絶滅の前触れ
奇形のあるプランクトンが大量絶滅の新たな要因を示唆している可能性を裏付ける証拠を示した論文が、今週掲載される。最古のいくつかの大規模な大量絶滅は氷河作用と関連していることがすでに明らかになっているが、この論文によれば、海洋の酸素欠乏の拡大と有害な金属が大量絶滅の原因である可能性の方が高いとされる。
今から4億2000万年以上前のオルドビス紀-シルル紀の大量絶滅事象は間欠的に起こり、当時は、大部分の生物が海の中で繁殖し、陸上で生き延びた生物はわずかだった。これまでの研究で示されたモデルでは、この大量絶滅事象の原因が気候の寒冷化と生息地の減少であることが示唆されていたが、こうしたモデルは、古生物学的観察結果と地球化学的観測結果を説明できない。
今回、Thijs Vandenbrouckeたちは、シルル紀後期の絶滅事象の開始時に起こったプランクトンの奇形の発生過程が、高濃度の金属毒素に対する現代の生物の応答に非常によく似ていることを明らかにした。Vandenbrouckeたちは、奇形のあるプランクトンの発生とその化石が保存された岩石の金属含有量の急増が同時に起こっていたことから、金属中毒も古代のプランクトンの奇形の原因だった可能性があると考えている。金属含有量が高いということは、海洋の化学組成が変化し、酸素欠乏の拡大が生物の死滅をもたらすメカニズムとなって、この初期絶滅事象に寄与したことを示唆している。
海洋の酸素欠乏が大量絶滅の背後にある駆動力だとする研究報告が最近になって発表されており、そのことは今回の研究によっても裏付けられている。また、奇形のある化石プランクトンが酸素欠乏期の開始時を明らかにするための新たな法医学ツールとなる可能性も示唆されている。
参考文献:
Vandenbroucke TRA. et al.(2015): Metal-induced malformations in early Palaeozoic plankton are harbingers of mass extinction. Nature Communications, 6, 7966.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms8966
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