多嚢胞性卵巣症候群の遺伝学的性質

 多嚢胞性卵巣症候群の遺伝学的性質についての研究(Hayes et al., 2015)が公表されました。多嚢胞性卵巣症候群は遺伝性が高く、全世界で女性の最大15%が罹患し、健康と生殖能力に悪影響が及んでいると考えられています。この研究は、ヨーロッパ系女性のコホートを対象とした全ゲノム関連解析を行い、多嚢胞性卵巣症候群に関連した一塩基多型および変異したと考えられる遺伝子を同定しました。その結果、ヨーロッパ系女性に特有の2つの座位が同定され、中国人コホートの研究ですでに判明していた一つの座位が確認されました。遺伝的疾患のなかには地域集団間で微妙な違いが存在する事例もあるようです。また、卵子の産生に必要なタンパク質をコードするFSHB遺伝子が多嚢胞性卵巣症候群に関連していることも明らかになり、ホルモンの調節において遺伝子バリアントが何らかの役割を果たしていることが示唆されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝】ヨーロッパ系女性の多嚢胞性卵巣症候群の遺伝学的性質に関する手掛かり

 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の遺伝学的性質を調べるための全ゲノム関連解析が行われ、ヨーロッパ系女性に特有の遺伝子バリアントが同定され、PCOSの生物学的性質の解明への手掛かりが得られた。この研究結果についての報告が、今週掲載される。

 全世界で女性の最大15%がPCOSに罹患し、その健康と生殖能力に悪影響が及んでいると考えられている。PCOSは遺伝性が高く、このことは強い遺伝的影響を暗示している。また、PCOSは臨床的特徴が複雑なため、複数の診断基準が存在している。

 今回、Geoffrey Hayes、Margit Urbanekたちは、ヨーロッパ系女性のコホートを対象とした全ゲノム関連解析を行い、米国立衛生研究所の基準を用いて、PCOSに関連した一塩基多型、そして、変異したと考えられる遺伝子を同定した。その結果、ヨーロッパ系女性に特有の2つの座位が同定され、中国人コホートの研究ですでに判明していた1つの座位が確認された。また、Hayesたちは、卵子の産生に必要なタンパク質をコードするFSHB遺伝子がPCOSに関連していることを発見した。このことは、ホルモンの調節において遺伝子バリアントが何らかの役割を果たしていることを示唆している。今回の研究により、人種間で微妙な遺伝的差異のある複雑な疾患の解明が進んだ。



参考文献:
Hayes MG. et al.(2015): Genome-wide association of polycystic ovary syndrome implicates alterations in gonadotropin secretion in European ancestry populations. Nature Communications, 6, 7502.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms8502

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