真核生物遺伝子における原核生物遺伝子の起源
これは9月24日分の記事として掲載しておきます。真核生物遺伝子における原核生物遺伝子の起源に関する研究(Ku et al., 2015)が公表されました。真核生物ゲノムに見られる原核生物遺伝子は、原核生物が細胞内共生によって細胞小器官となった後にゲノム内に入り込んだ、と長年考えられてきました。しかし近年になって、真核生物同士の間でも原核生物と真核生物の間でも、遺伝子水平伝播がかなりの程度で起こっている、と示唆されています。この研究は、細菌・古細菌・真核生物のゲノムを解析し、持続的な遺伝子水平伝播が真核生物の遺伝子含量の進化に検知可能な累積的影響を及ぼしたことを示す証拠は見出されなかった、との見解を提示しています。このことから、真核生物はミトコンドリアや色素体の起源に対応する2回の進化的流入で原核生物遺伝子を獲得し、その後に遺伝子の大規模な差次的喪失が起こったのではないか、と考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
進化学:真核生物遺伝子の細胞内共生起源と差次的喪失
進化学:真核生物が有する原核生物遺伝子の起源
真核生物ゲノムに見られる原核生物遺伝子は、原核生物が細胞内共生によって細胞小器官となった後にゲノム内に入り込んだものと長年考えられてきた。しかし近年の証拠から、真核生物同士の間でも、原核生物と真核生物の間でも、遺伝子水平伝播がかなりの程度で起こっていることが示唆されている。そこで今回、細菌やアーキア、真核生物のゲノム解析が行われたが、持続的な遺伝子水平伝播が真核生物の遺伝子含量の進化に検知可能な累積的影響を及ぼしたことを示す証拠は見いだされなかった。真核生物はむしろ、ミトコンドリアや色素体の起源に対応する2回の進化的流入で原核生物遺伝子を獲得し、その後に遺伝子の大規模な差次的喪失が起こったと考えられる。こうした経緯で、複雑な細胞の核ゲノム内に細胞内共生の大きな痕跡が残ったのである。
参考文献:
Ku C. et al.(2015): Endosymbiotic origin and differential loss of eukaryotic genes. Nature, 524, 7566, 427–432.
http://dx.doi.org/10.1038/nature14963
進化学:真核生物遺伝子の細胞内共生起源と差次的喪失
進化学:真核生物が有する原核生物遺伝子の起源
真核生物ゲノムに見られる原核生物遺伝子は、原核生物が細胞内共生によって細胞小器官となった後にゲノム内に入り込んだものと長年考えられてきた。しかし近年の証拠から、真核生物同士の間でも、原核生物と真核生物の間でも、遺伝子水平伝播がかなりの程度で起こっていることが示唆されている。そこで今回、細菌やアーキア、真核生物のゲノム解析が行われたが、持続的な遺伝子水平伝播が真核生物の遺伝子含量の進化に検知可能な累積的影響を及ぼしたことを示す証拠は見いだされなかった。真核生物はむしろ、ミトコンドリアや色素体の起源に対応する2回の進化的流入で原核生物遺伝子を獲得し、その後に遺伝子の大規模な差次的喪失が起こったと考えられる。こうした経緯で、複雑な細胞の核ゲノム内に細胞内共生の大きな痕跡が残ったのである。
参考文献:
Ku C. et al.(2015): Endosymbiotic origin and differential loss of eukaryotic genes. Nature, 524, 7566, 427–432.
http://dx.doi.org/10.1038/nature14963
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