チンパンジーによる顔の効率的な探索
これは9月20日分の記事として掲載しておきます。チンパンジー(Pan troglodytes)による顔の効率的な探索に関する研究(Tomonaga, and Imura., 2015)が公表されました。顔は社会生活を送る霊長類にとって、きわめて重要な視覚刺激の一つです。近年の比較認知研究の進展により、チンパンジーと人間は全体もしくは目・鼻・口などのパーツの空間的配置で顔の情報を捉える、という特別なやり方で処理していることが明らかになっています。チンパンジーも人間も、顔を倒立画像で提示すると知覚や認知の効率が低下する「顔の倒立効果」が見られます。さらに、人間は顔以外の多数の画像と共に提示された人間の顔を素早く見つけ出せることが明らかになっています。
この研究は、チンパンジーが顔以外の画像と共に提示された同種の顔をきわめて効率的に見つけ出せることを報告しています。この効率的な探索は同種の顔に限定されていませんでした。チンパンジーたちは、人間の成人や赤ん坊の顔も効率的に見つけ出しましたが、ニホンザルの顔は効率的に見つけ出せなかった、とのことです。また、正面の顔のほうが横顔よりも容易に見つけ出せることが分かり、このことから、互いに目を合わせるアイコンタクトの重要性が示唆されています。顔の効率的な検出は倒立提示によって妨げられたことから、人間でもチンパンジーでも、顔に特異的な情報処理が顔の効率的な検出に不可欠な要素になっている、と考えられています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
チンパンジー(Pan troglodytes)による顔の効率的な探索
顔は、社会生活を送るヒトやヒト以外の霊長類にとって極めて重要な視覚刺激の1つである。近年の比較認知研究の進展から、チンパンジーとヒトは、顔の情報を全体もしくは目・鼻・口などのパーツの空間的配置で捉えるという特別なやり方で処理していることが明らかになっている。どちらの種も、顔を倒立画像で提示すると知覚や認知の効率が低下する「顔の倒立効果」が見られる。さらに、近年の研究で、ヒトは顔以外の多数の画像と共に提示されたヒトの顔を素早く見つけ出せることが明らかになっている。今回われわれは、チンパンジーが、顔以外の画像と共に提示されたチンパンジーの顔を極めて効率的に見つけ出せることを報告する。この効率的な探索は自分と同じ種の顔に限定されてはいなかった。実験に参加したチンパンジーたちは、ヒトの成人や赤ん坊の顔も効率的に見つけ出したが、ニホンザルの顔は効率的に見つけ出せなかった。さらなる実験で、正面の顔のほうが横顔よりも容易に見つけ出せることが分かり、このことから、互いに目を合わせるアイコンタクトの重要性が示唆された。チンパンジーは、バナナの写真も顔と同じくらい効率的に見つけ出したが、追加で行ったテストから、バナナは主に低次の特徴(色など)によって見つけ出していることがはっきり示された。顔の効率的な検出は倒立提示によって妨げられたことから、ヒトでもチンパンジーでも、顔に特異的な情報処理が、顔の効率的な検出に不可欠な要素になっていると考えられる。この結論は、サリエンシー(顕著性)モデルを用いた単純なシミュレーション実験によって裏付けられた。
参考文献:
Tomonaga M, and Imura T.(2015): Efficient search for a face by chimpanzees (Pan troglodytes). Scientific Reports, 5, 11437.
http://dx.doi.org/10.1038/srep11437
この研究は、チンパンジーが顔以外の画像と共に提示された同種の顔をきわめて効率的に見つけ出せることを報告しています。この効率的な探索は同種の顔に限定されていませんでした。チンパンジーたちは、人間の成人や赤ん坊の顔も効率的に見つけ出しましたが、ニホンザルの顔は効率的に見つけ出せなかった、とのことです。また、正面の顔のほうが横顔よりも容易に見つけ出せることが分かり、このことから、互いに目を合わせるアイコンタクトの重要性が示唆されています。顔の効率的な検出は倒立提示によって妨げられたことから、人間でもチンパンジーでも、顔に特異的な情報処理が顔の効率的な検出に不可欠な要素になっている、と考えられています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
チンパンジー(Pan troglodytes)による顔の効率的な探索
顔は、社会生活を送るヒトやヒト以外の霊長類にとって極めて重要な視覚刺激の1つである。近年の比較認知研究の進展から、チンパンジーとヒトは、顔の情報を全体もしくは目・鼻・口などのパーツの空間的配置で捉えるという特別なやり方で処理していることが明らかになっている。どちらの種も、顔を倒立画像で提示すると知覚や認知の効率が低下する「顔の倒立効果」が見られる。さらに、近年の研究で、ヒトは顔以外の多数の画像と共に提示されたヒトの顔を素早く見つけ出せることが明らかになっている。今回われわれは、チンパンジーが、顔以外の画像と共に提示されたチンパンジーの顔を極めて効率的に見つけ出せることを報告する。この効率的な探索は自分と同じ種の顔に限定されてはいなかった。実験に参加したチンパンジーたちは、ヒトの成人や赤ん坊の顔も効率的に見つけ出したが、ニホンザルの顔は効率的に見つけ出せなかった。さらなる実験で、正面の顔のほうが横顔よりも容易に見つけ出せることが分かり、このことから、互いに目を合わせるアイコンタクトの重要性が示唆された。チンパンジーは、バナナの写真も顔と同じくらい効率的に見つけ出したが、追加で行ったテストから、バナナは主に低次の特徴(色など)によって見つけ出していることがはっきり示された。顔の効率的な検出は倒立提示によって妨げられたことから、ヒトでもチンパンジーでも、顔に特異的な情報処理が、顔の効率的な検出に不可欠な要素になっていると考えられる。この結論は、サリエンシー(顕著性)モデルを用いた単純なシミュレーション実験によって裏付けられた。
参考文献:
Tomonaga M, and Imura T.(2015): Efficient search for a face by chimpanzees (Pan troglodytes). Scientific Reports, 5, 11437.
http://dx.doi.org/10.1038/srep11437
この記事へのコメント