雄のニワトリが夜明けに鳴く順番(追記有)

 雄のニワトリが夜明けに鳴く順についての研究(Shimmura et al., 2015)が報道されました。雄のニワトリは夜明けに鳴くことが知られています。この研究は、そのさいの順番が社会的序列の高い雄のニワトリからであることを明らかにしました。ニワトリは高度に社会的な動物であり、集団の中で階層を形成し、序列が上の雄が食物・交尾する権利・巣とねぐらなどに関して優先権を握っていることがあります。雄のニワトリの夜明けの鳴き声は、周囲のニワトリに対して縄張りの境界線に関する警告を発し、攻撃的相互作用の危険性を回避するための手段だと考えられています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【動物学】雄鶏が時を告げる際の序列

 ニワトリの集団では、序列が最高位の雄鶏が必ず最初にコケコッコーと鳴いて夜明けを告げ、その後は社会的順位の高い雄鶏から順にコケコッコーと鳴いていくことが明らかになった。その詳細についての報告が、今週掲載される。

 ニワトリは高度に社会的な動物であり、時を告げる鳴き声は、周囲のニワトリに対して縄張りの境界線に関する警告を発し攻撃的相互作用のリスクを回避するための手段だと考えられている。ニワトリは集団の中で階層を形成し、序列が上の雄鶏が、食物、交尾する権利、巣とねぐらなどのリソースに関して優先権を握っていることがある。

 今回、名古屋大学の新村毅(しんむら・つよし)と吉村崇(よしむら・たかし)たちは、雄鶏の社会的階層が、夜明けにコケコッコーと鳴く行為に影響を及ぼすかどうかを調べた。その結果、4匹の雄鶏からなる集団において、序列が最高位の雄鶏が毎朝最初にコケコッコーと鳴いて夜明けを告げ、その後は社会的順位の高い雄鶏から順に鳴いていくことが分かった。また、序列の低い雄鶏は、序列の高い雄鶏ほど頻繁に鳴かないことも判明した。そして、序列が最高位の雄鶏を除外した実験では、序列が第2位の雄鶏が最初にコケコッコーと鳴いた。序列が最高位の雄鶏が存在する場合には、序列の低い雄鶏が夜明け前に鳴くことが抑制されることを今回の研究結果は示唆している。



参考文献:
Shimmura T, Ohashi S, and Yoshimura T.(2015): The highest-ranking rooster has priority to announce the break of dawn. Scientific Reports, 5, 11683.
http://dx.doi.org/10.1038/srep11683


追記(2015年9月18日)
 『ネイチャー』の日本語サイトで改めて取り上げられていたので引用します。



最上位の雄鶏が朝を告げる優先権を有する

 多くの文化で夜明けの象徴となっている雄鶏の「コケコッコー」という鳴き声は、体内時計によって制御されている。1羽の雄鶏が朝を告げると、近くにいる他の雄鶏たちはすぐさまそれに続く。ニワトリは高度に社会的な動物であり、小集団のなかに直線的で固定的な階層構造を発達させる。我々は、ニワトリを小集団にまとめると最上位の雄鶏が夜明け前の発声のタイミングを決定することを発見した。詳細にいえば、最上位の雄鶏が常に最初に鳴き始め、その後で社会的な順位にしたがって下位の雄鶏たちが続いた。最上位の雄鶏を集団から物理的に除外すると、2位の雄鶏が最初に鳴き始めた。上位の雄鶏の存在は、下位個体の未明の発声回数を大幅に減少させた。しかし、外的な刺激を受けて鳴く回数は社会的な順位と無関係であったことから、下位個体は鳴く能力を有していることが確認された。下位個体が未明に鳴くタイミングは最上位の雄鶏が鳴くタイミングに強く依存していたが、体温リズムの自由継続周期は個体間で異なり、鳴きのリズムは鳴き声の音の刺激に同調しなかった。以上の結果は、集団という状況のなかでは最上位の雄鶏が朝を告げる優先権を有することとともに、下位の雄鶏たちは毎朝最上位の雄鶏が鳴き始めるのを待つだけの忍耐力を有し、社会的な理由で体内時計に背いていることを示している。

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