火山性変動の年代の再較正

 火山性変動の年代の再較正についての研究(Sigl et al., 2015)が公表されました。火山噴火の気候への影響は知られていますが、1年の分解能で正確に年代決定された年輪の年代と、氷床コアに記録された火山性変動の年代を一致させるのは難しいとされてきました。この研究は、775年にヨーロッパ全域の樹木の年輪に、独特な大気中の炭素14の指紋を残した宇宙線異常との関連がはっきりしている、大気中のベリリウム10の急上昇を、グリーンランドと南極から得られた氷床コアで同じように観察されるベリリウム10の急上昇の年代を決定する手段として用いました。その結果、年輪と氷床コアの年代を関係づけるさいには、氷床コアの記録を7年ずらすべきであることが明らかになりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


地球化学:過去2500年間の火山噴火のタイミングと気候強制

地球化学:火山噴火と気候のつながりの再較正

 火山噴火が気候に影響を与えることは過去の研究から示唆されているが、1年の分解能で正確に年代決定された年輪の年代と氷床コアに記録された火山性変動の年代を一致させるのは難しいことが分かっている。今回M Siglたちは、775年にヨーロッパ全域の樹木の年輪に独特な大気中14Cの指紋を残した宇宙線異常との関連がはっきりしている大気中10Beの急上昇を、グリーンランドと南極から得られた氷床コアで同じように観察される10Beの急上昇の年代を決定する手段として用いた。その結果、年輪と氷床コアの年代を関係付ける際には、氷床コアの記録を7年ずらすべきであることが分かった。このデータによって、熱帯と高緯度域における大規模な火山噴火が過去2500年間の北半球の気温変動の主な要因であることが確かめられ、そうした噴火は、6世紀に起こったパンデミック、飢饉、社会経済的な混乱の触媒として働いたことが示唆された。



参考文献:
Sigl M. et al.(2015): Timing and climate forcing of volcanic eruptions for the past 2,500 years. Nature, 523, 7562, 543–549.
http://dx.doi.org/10.1038/nature14565

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック