中央ヨーロッパにおける新石器時代の暴力
中央ヨーロッパにおける新石器時代の暴に関する研究(Meyer et al., 2015)が報道されました。AFPでも報道されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、線形陶器文化(Linearbandkeramik Culture)に属するドイツの「Schöneck-Kilianstädten」遺跡(7000年前頃)の集団墓地で発見された少なくとも26個体分の人骨を調査し、前期新石器時代(紀元前5600~紀元前4900年)の中央ヨーロッパにおける暴力行為の頻度を検証しています。
「Schöneck-Kilianstädten」遺跡の人骨群には多くの傷が確認されました。その中には、矢傷とともに、致命傷になったと思われる頭部への激しい打撃が見られました。さらに、犠牲者の下肢は死の前後に意図的に破壊されており、拷問や切断が行なわれたのではないか、と推測されています。また、若い女性の犠牲者が少ないことから、女性は戦闘には主体的に関わっておらず、襲撃者たちにより女性が誘拐されたのではないか、とも推測されています。
本論文は、前期新石器時代、とくに線形陶器文化末期の中央ヨーロッパにおいて、こうした大量殺戮は孤立した事例ではなく頻繁に生じていて、このような闘争の目的は標的とした共同体の全滅にあり、そうした闘争が線形陶器文化衰退の要因になったのではないか、との見解を提示しています。新石器時代にも暴力行為が頻繁に生じていた可能性は高いのでしょう。これは中央ヨーロッパだけではなく、ある程度の差はあっても、世界全体で共通して見られる傾向なのかもしれません。
人口が増加した一方で、政治権力への暴力の集中(「国家」形成)がまだ進んでいなかった新石器時代には、更新世(旧石器時代)よりも暴力が激化した、とも考えたくなりますが、新石器時代と旧石器時代の暴力行為の比較については、今後も検証が必要ではないか、と思います。旧石器時代にも、集団間・集団内での暴力行為が頻発していた可能性は高いだろう、と私は考えているのですが、検証の難しい問題であることは否定できません。
参考文献:
Meyer C. et al.(2015): The massacre mass grave of Schöneck-Kilianstädten reveals new insights into collective violence in Early Neolithic Central Europe. PNAS, 112, 36, 11217–11222.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1504365112
「Schöneck-Kilianstädten」遺跡の人骨群には多くの傷が確認されました。その中には、矢傷とともに、致命傷になったと思われる頭部への激しい打撃が見られました。さらに、犠牲者の下肢は死の前後に意図的に破壊されており、拷問や切断が行なわれたのではないか、と推測されています。また、若い女性の犠牲者が少ないことから、女性は戦闘には主体的に関わっておらず、襲撃者たちにより女性が誘拐されたのではないか、とも推測されています。
本論文は、前期新石器時代、とくに線形陶器文化末期の中央ヨーロッパにおいて、こうした大量殺戮は孤立した事例ではなく頻繁に生じていて、このような闘争の目的は標的とした共同体の全滅にあり、そうした闘争が線形陶器文化衰退の要因になったのではないか、との見解を提示しています。新石器時代にも暴力行為が頻繁に生じていた可能性は高いのでしょう。これは中央ヨーロッパだけではなく、ある程度の差はあっても、世界全体で共通して見られる傾向なのかもしれません。
人口が増加した一方で、政治権力への暴力の集中(「国家」形成)がまだ進んでいなかった新石器時代には、更新世(旧石器時代)よりも暴力が激化した、とも考えたくなりますが、新石器時代と旧石器時代の暴力行為の比較については、今後も検証が必要ではないか、と思います。旧石器時代にも、集団間・集団内での暴力行為が頻発していた可能性は高いだろう、と私は考えているのですが、検証の難しい問題であることは否定できません。
参考文献:
Meyer C. et al.(2015): The massacre mass grave of Schöneck-Kilianstädten reveals new insights into collective violence in Early Neolithic Central Europe. PNAS, 112, 36, 11217–11222.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1504365112
この記事へのコメント