アナトリア最古の石器?

 取り上げるのが遅くなってしまいましたが、アナトリアにおける人類の痕跡の年代に関する研究(Maddy et al., 2015)が報道されました。アナトリアは前期更新世においてもアジアからヨーロッパへの人類拡散の経路として注目されていますが、下部旧石器時代のアナトリアに関しては、確実な年代の遺跡が稀であり、詳しいことが分かっていません。本論文は、旧石器の発見されたアナトリア西部のゲディズ川(Gediz River)の古流路の堆積物から、アルゴン-アルゴン法と古地磁気法により得られた年代測定結果を報告しています。

 その結果、人類はこの地域に124万~117万年前頃に存在していたことが明らかになりました。本論文は、これはアナトリアにおける確実な年代の人類の痕跡としては最古のものになる、とその意義を強調しています。グルジアのドマニシ遺跡では180万年以上前の人類の痕跡が確認されており(関連記事)、ヨーロッパでは120万~110万年前頃の人骨がイベリア半島北部で発見されています(関連記事)。また、人骨は発見されていませんが、フランス南部では157万年前頃の石器が発見されています(関連記事)。

 こうしたことから考えると、アナトリアには170万~160万年前頃には人類が進出していたとしても、不思議ではないでしょう。おそらく最初にアナトリアに進出した人類はエレクトス(Homo erectus)なのでしょうが、ドマニシ遺跡の例から考えると、エレクトスよりも原始的特徴を有する最初期のホモ属というか、アウストラロピテクス属~ホモ属への移行的な系統の人類が進出していた可能性もあるでしょう。今後の人骨の発見が期待されます。


参考文献:
Maddy D. et al.(2015): The earliest securely-dated hominin artefact in Anatolia? Quaternary Science Reviews, 109, 68–75.
http://dx.doi.org/10.1016/j.quascirev.2014.11.021

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