ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』452話~455話

452話「山さんがボスを撃つ!?」・453話「俺を撃て!山さん」9
 基本的には一話完結の『太陽にほえろ!』には珍しく、452話・453話の2話で完結という構成になっています。山さんがボスを撃たねばならない状況に追い込まれるという衝撃的な話です。当時、視聴率が低迷してきたことに悩んでいた制作側が話題性の強い話を作ろうとしたのではないか、と思われます。ある日、ボスは外で突き飛ばされて自動車にはねられます。捜査の結果、容疑者はすぐに見つかります。寺田というその容疑者には、ボスを恨む動機がありました。

 かつて、寺田の妻子は逃亡中のタクシー強盗犯にはねられ、子供はその時の怪我が原因で死に、妻はその後に自殺しました。強盗犯を追跡中のボスは、妻子を置き去りにして強盗犯を追跡した、と寺田は認識していました。ボスがすぐに病院に連れていくか、通報しておけば妻子は助かったのではないか、ということで寺田はボスを深く恨んでいました。山さんは、ボスが寺田の妻子を見捨てたのではないことを証明しようとします。山さんは、ボスが直ちに救急車を要請したことを証明し、寺田に伝えますが、負傷者の妻子より凶悪犯の追跡を優先せざるを得ない、と説明する山さんに寺田は納得せず、かえって怒りを募らせたようです。

 寺田は行方をくらまし、一係が捜査を続けるなか、ボスを突き飛ばしたのが寺田ではなく、別人であることが判明します。それは、寺田の証言通りの容貌の男性でした。その男性にはボスにたいする恨みはなく、殺意があったわけではありませんでした。一係が安堵するなか、山さんの息子が誘拐されます。誘拐したのは寺田で、寺田は山さんに、ボスを射殺するよう要求します。一係は寺田の居場所を突き止め、山さんの息子を無事に奪還し、寺田を逮捕します。ところが、寺田は逮捕されても高笑いし、午後2時になるまで黙秘を続ける、と言って意味深な表情を浮かべます。

 その予告通りに午後2時に爆破事件が起き、寺田は、次の爆発は午後4時でもっと規模も大きい、と脅迫します。寺田は、山さんがボスを射殺するところをテレビで中継しろ、と要求します。一係は寺田の仕掛けた爆弾を探しますが、午後4時が迫るなか、長さんの必死の説得も実らず、寺田は再度山さんにボスを射殺するよう要求します。ついに山さんはボスを撃ち、ボスは腕を負傷します。ボスはそんな山さんに、今度は外さないように、と覚悟を決めて言います。山さんが本気でボスを射殺しようとし、ボスが殺される覚悟を決めたのを見た寺田は、ついに爆弾の場所を自供し、ぎりぎりで爆発は回避されました。

 衝撃的だったので、この2話はよく覚えているのですが、以前の視聴よりも評価が下がってしまった感は否めません。確かに、緊張感の続く話であり、一係の結束と信頼関係、ボスの器の大きさが描かれるなど、この後間もなくボスが長期欠場することもあって、集大成的な感もあり、歴代でも上位に入る内容だと考える視聴者が多くいても不思議ではありません。しかし、冷静に振り返ってみると、山さんの説得がかえって寺田を犯行に追い込んだ感は否めず、以前の視聴時よりも感動要素が薄れてしまいました。その分、評価も下げます。


454話「スコッチ、市民を撃つ」8
 『太陽にほえろ!』ではたまにある動物ものです。『太陽にほえろ!』の動物ものは、一係が警察犬とともに捜査を行なう話と、一係が犬を使った犯罪を調べていくという話がありますが、今回は後者です。ボクサー犬が突然女性を襲い、日本では珍しい犬種ということで、すぐに飼い主は3人に絞り込まれます。スコッチはその中から、自分の調べた男性の飼い犬が女性を襲ったのではないか、と判断します。さらにスコッチは、その飼い主の男性が飼い犬に人を襲わせるよう訓練させているのではないか、と疑います。飼い主の男性は金銭的に苦しく、裕福な義母を狙っているのではないか、とスコッチは疑っていました。飼い主の男性が人を襲わせる合図を出そうとしている、と判断したスコッチは、男性を撃ちます。事情の分からないマスコミは、刑事が無実の市民を撃った、と非難します。

 ところが、スコッチが自説を証明しようとして犬に合図を出しても、犬は反応しません。スコッチは査問委員会が開かれるまで謹慎処分となります。まあ謹慎処分とはいっても、スコッチが素直に従うわけではなく、ボスも含めて一係の他の刑事もスコッチが捜査を続けることを当然視しているわけですが・・・。一係は何が合図になっているのか、調べますが、なかなか特定できません。一係が犬への合図を調べていると気づいた男は、予定を早めて退院し、義母と旅行に出かけようとします。スコッチは捜査を続け、ついに何が合図になっていたのか、確証を得ます。スコッチの初期の孤高な感じが見られ、話自体もまずまずの面白さだったと思いますが、強烈な印象に欠けた感は否めません。もう少し話にひねりか山場が欲しかったところです。スコッチが若手のリーダー格として指示を出している場面も見られ、頼もしい限りですが、この後スコッチも欠場しがちになり、やがて殉職するのかと思うと、寂しくなります。


455話「死ぬなスニーカー」9
 若手刑事が殉職の危機に陥る、という『太陽にほえろ!』の定番で、今回はスニーカーが死にかけます。マンションの一室でガス爆発が起き、男性が死亡します。しかし、その男性はガス爆発前に撲殺されていました。証拠隠滅のために部屋を爆発したのではないか、と一係は疑います。やがて、男性が殺害される直前に部屋にいた別の男性が特定され、さらには殺害された男性の妹の部屋が荒らされます。この兄妹は沖縄出身で、スニーカーは自分にも妹がいるということもあって、妹に深く同情します。

 動機のよく分からない謎めいた事件でしたが、スコッチは、殺害された男性が密輸に関わっていたのではないか、と突き止めます。やがて被害者男性の妹が、兄のことで話したいと呼び出されます。被害者男性の妹を呼び出したと思われる男性を一係は追跡しますが、その男性は逃亡中に事故死します。しかし、その男性を調べると、麻薬の密輸に関わっており、殺害された男性が麻薬の売り上げを奪っていたことと、外交官が事故死した男性と関わっていたことが明らかになります。その外交官は、スコッチがわずかな手がかりから調べていた男性でした。

 ところが、その外交官も殺害されてしまいます。ゴリさんが外交官殺害の容疑者を調べていると、なんとマンションの一室で撲殺されたはずの男性が浮かび上がります。その男性は、自分の保険証で別の男性に歯の治療を受けさせており、そのために歯科医も誤認した、というわけです。偽装工作で捜査を攪乱した真犯人の男性の妹は帰郷するというので、スニーカーは港まで見送ります。そこで真犯人を見つけたスニーカーは、拳銃を所持していない状態で真犯人の男性に狙われます。

 スニーカーは格闘の末に真犯人を取り押さえますが、そこへ真犯人の妹が現れ、真犯人の拳銃を手に取りスニーカーに向けます。兄妹は最初から手を組んでいた、というわけです。スニーカーは逃げますが、銃弾を受けてしまい、絶体絶命の状況に陥ります。しかし、間一髪でゴリさん・ロッキー・ドックが駆けつけ、スニーカーは窮地を脱します。スニーカーと妹との関係は、若手刑事の定番とも言える悲恋もの的性格もあるように思われて、まさに『太陽にほえろ!』の定番といった感があります。スニーカーの妹が後に殺害され、スニーカーが退職して沖縄に帰ることを思うと、もの悲しい話でもありました。

 今回は、話自体がなかなか込み入っていて、楽しめました。ただ、序盤にゴリさんが真犯人の男性の死を歯科医に確認した時点で、実はこの男性は生きているのではないか、と示唆するような描写になっていたので、真相が明らかになった時点でも、さほど意外な感はありませんでした。ドック登場以降の『太陽にほえろ!』は作風がさらに軽くなり、つまらなくなった、と思っていましたが、ボスと山さんだけではなく、長さんとゴリさんもおり、若手のリーダー格としてスコッチがいるというこの体制は、ドックの軽さを抑えているところもあり、悪くはないかな、とも思います。この体制が、間もなくボスの長期欠場とスコッチの病欠により崩れるのが残念です。

この記事へのコメント

いち
2015年07月07日 21:55
こんばんは。454話「スコッチ、市民を撃つ」ですが、221話「刑事失格!?」とよく似ていると思います。221話でいう、わけがわからないでいた後輩刑事は、ボンでしたが、今回はスニーカーでした。心配する後輩刑事をよそに、多くを語らないスコッチ。とわいえ、きっちり根拠を持っていたところなんかは、とても面白いと思います。また、犯人の義母役の荒木道子は328話「待ち合わせ」でボンと共演してたので、個人的にはやはりボンを想い出してしまいます。
2015年07月07日 22:51
スコッチは登場当初から若手枠ながらベテラン刑事のような成熟したところを見せていたので、他の未熟な若手刑事との対比だと映えますね。

ロッキーの在籍期間が4年近くなったこの頃となると、スコッチとの対比となるとスニーカーが適役でしょうね。
一係の非常勤
2018年09月30日 05:43
#452『山さんがボスを撃つ?!』
#453『俺を撃て!山さん』

太陽に限らず、ほとんどのドラマが『日常の中の非日常』起こり得ないこと 有り得ないことを描いている。
(大河や朝ドラなど、歴史上の人物を取り上げてる一部の物は別として。)

このショッキングな2回、元々は、当時番組を好きで見ていた熱心な一女性ファンが送ったシナリオプロットが採用された物だというのを管理人は知っていましたか?
その方は、いつもチームワーク抜群で事件解決に当たっている一係に、『もしもこんな緊急事態が起こったら?』という想定で書いた物が、山さんがボスを撃ったらどうなるのか?犯人逮捕の際の若手刑事の苦悩・葛藤は犯人との対比をさせて毎回のように描いているが、それがベテランの山さんだったら?という思いを込めたそうです。

自分的にはスニーカー在籍時(後期だが)の話としては名作の2本として数えたいし、当時の太陽を書いていた、脚本家の誰もが思いつかなかった、(タブーとしていた一種の禁じ手を使った)ことを素直に誉めたいと思う。
2018年09月30日 06:47
その話はどこかで聞いたことがあります。初視聴時の衝撃という点では全話のなかでも最高です。

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